精神科閉鎖病棟入院8

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精神科閉鎖病棟入院8

その日の夜、私は相変わらずいつもの三人でソファーに座って窓の外を眺め、話をしていた。 でも、明日医師と話すことも、母と電話で話したことも、退院したいと言うことも、何ひとつ二人には明かさなかった。 明かしてはいけないような気がしていた。 きっと私は退院できるだろうと思った。 母は迎えに来るだろうと思った。 どんな気持ちなのかはわからないけれど、高校生になったあたりから色々と手がつけられなくなった私の言うことを、母はなんでも聞くようになっていた。 歪んだ家族だったと思う。 でも、迎えに来てくれたら「ありがとう」ときちんと言おうと思っていた。 次の日の昼食の後、私は無事に医師の元へと案内された。 広くて綺麗で、清潔な診察室で、中年の医師が「どういうお話がしたいの」と私に聞いた。 私は「何故ここにいるのかがわからないです。退院したいです」と答えた。 医師は何がおかしいのかわからないが、小さな声をあげて笑った。 「それもそうだ」と答え、私の退院を認めてくれた。 何日も人間扱いされない生活をしていた日々が、たったこれだけで、たったの、このやりとり一つだけで終わった。 一度目との面談とは偉い違いだった。 私の退院は、決まった。
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