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精神科閉鎖病棟入院9
次の日の午前中、私は体操には出ないので寝こけていたら、看護師さんから起こされた。
ベッドの上には、私の服と、私のパンツと、中身もちゃんと入っているバックがおかれていた。
「すぐに着替えて準備をしてくださいね」と言われ、仕切りのカーテンを閉められた。
私はあまり状況が理解できないまま、オムツからパンツに履き替え、ニーハイを履き、ワンピースに腕を通すと、最後にコートを羽織った。
バックの中に入っている化粧品と手鏡を使い久しぶりに化粧をすると、仕切りのカーテンを開け、廊下にいた看護師さんに「出来ました」と声をかけた。
廊下を歩き、広間を通り抜ける時に、いつも一緒に過ごしていた女の子に呼び止められた。
私は半分だけ振り返って、片手をあげると、そのまま足早に看護師さんのあとをついて行く。
大きな広間の端っこに、全然気づかなかったが、人が一人通れるくらいのドアがあった。
分厚いドアで、鍵も取っ手も何もついていない。
そこを、どうやって開けたのか、看護師さんが開けると、私に出るように促した。
すると私の靴が置いてあり、下へと向かう階段が続いていた。
私は看護師さんに言われるまま後をついて行く。
そして、この大病院のとても広い待合室にたどり着く。
この病院はどうやら本当に大きくて、広くて、さらに言えば待合室にもたくさんの患者さんが溢れていた。
私は(入院費がやべえことになってんじゃねえの)と内心思っていたが、どうやら支払いを終えたらしい母親と無事に合流することが出来た。
母は一瞬黙り込むと、俯いた。
ただ、痩せこけた私を見て、「ごめんね」とただそれだけ言った。
騒がしい待合室では他の言葉は何ひとつ聞こえなかった。
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