キミに捧ぐチョコレート(笹乃edition)

かふぇ

「今日は美咲なに食べるの？
　よくそんなに甘いもん食えるよな」

　週二回の喫茶店は私にとって幸福の時間。甘いものは嫌いという明日太はコーヒーだけだから、私は必ずデザートをプラスして滞在時間をより伸ばそうと画策している。お小遣い事情だってあるというのに、そんなけなげな私の画策を「ただの甘いもの好き」で片づけているのが解せない。

　でも、長い時間をかけて彼の好みを分析してきたから、今年のバレンタインは絶対特製の手作りチョコを渡すんだ♫

　コーヒーはモカが好き。
　甘いものは嫌い。

　即ち、モカベースでほろにがなチョコを作れば喜んでもらえる。確信のための調査と試作は数知れずなんだから。

「ねぇ明日太。モカと言えば相変わらず元気いっぱいしてる？」

　モカはうちから養女として明日太の家に行った猫ちゃん。

「は？　モカなんて言ってねぇし。お前の頭ん中はいつも色々すっとんでるよな。まぁ元気も元気。元親(もとおや)に似て、大騒ぎだよ。まだまだ大人になりきれてねぇ子供で可愛いよ」

　明日太の中で私のイメージってどんなだよ。これは少し大人しくしなきゃだな。

　うちにいるつがいの猫ちゃんから生まれた子、モカは明日太の家に引き取られた。なんだか親戚のような感覚で嬉しくなる。つながってる感じが強くある。

　猫は全てを繋げる神的存在だ。