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チョコの季節
今年もバレンタインの季節が近づいてきた。というよりすでに今度の日曜と差し迫っている。去年のバレンタインは女子友たちの友チョコで大変だったから、今年も容易に想像はつく。
加えて考えられるのが、後輩の子たちからのもの。たくさんもらうんだろうなあ私……。
男子より多くのチョコを抱える女子って、共学校ではあってはならない事態なんじゃないの?
今年の体育祭で見せた私の快足が、一年女子に大ヒット。手紙やプレゼントが頻繁に届くようになり、ジョシにモテているのが現状。だから、バレンタインも察しがつくのだ。
──まいったわね。
そんなどころじゃない私の気持ちなんて誰も知りえない。
私は女子だー、花の高校二年生の女子なんだー!
恋してるんだ、恋をしているのよ、邪魔をしないで!
なんて叫べたら楽なんだろうな。
でもそれじゃ明日太に間接的に伝わっちゃうじゃない。それはまずい、ダメだ。
「はぁ。困ったなぁ」
思わずこぼれた私の言葉を明日太が拾う。
「無理して小説なんか読むから。どうせ熟語かなんかの漢字が読めないんだろ?」
軽く馬鹿にしたような顔で私に投げかける。お前のせいで困っているんだと言いたい気分だよ。
ここは図書室。私の隣にいるのは成瀬明日太。同級生で、同じ図書委員で、私の初恋の相手で「親友」で。彼は読書が好きという理由で図書委員に入った。だから私も図書委員に入った。実際、漫画しか読まない私にとってはなんとも居心地の悪い部屋なんだけど、彼の近くにいられることで、全ての負を凌駕できる部屋となっている。
しかも!
週二回の担当日は一緒に帰れるし、喫茶店にも寄れるという豪華オプション付きだからたまらない。私だけの特権なの。
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