1.邂逅

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1.邂逅

「おい、いい加減出てこいよ、いるのは知ってるんだ」 誰もいないはずの後ろの道路に声をかける ゆらりと電柱の影から現れたのは僕の全く知らない人だった 「せぇんぱぁい…気付いてたなら早く言ってくださいよぉ」 黒髪ロング、眼鏡をかけた普段は真面目そうな少女 まあ、見かけだけで判断するならそれくらいか 「誰だ、お前」 本当に知らない人なんだよ……誰 「あっれぇ…忘れちゃったんですかぁ なら私があそこで思い出させてあげますよぉ?」 そう言い彼女が指差した先はこの町でたった一つの休憩所だった、深い意味の 「ばかやろう」 そう言いながら彼女の頭を軽く叩く しかしこれ、向こうのペースに乗せられてないか…? それはまずい、油断したところを包丁か何かで刺されるんだろう 何か恨みを買った覚えは全くないが 「それでお前は誰なんだ、ストーカー」 そうこいつはここ最近僕の周りをうろうろしているストーカーだ 何で俺をストーカーするのかは知らないが 誰からも慕われる様な陽キャでも、なにか話が上手い訳でもなく 好かれる様なことも一度もしていない 「………」 彼女は何も言わない 「何とか言ったらどうなんだ」 少しイライラしてしまう 僕は今から家でイベントを走るという大事な使命があるんだ 「……もう、いいです……」 泣きそうな、聞こえるか聞こえないほどの小さい声だった 「いや、そうじゃなくて、そういうことじゃなくて…」 少しおどおどしてしまう僕 なぜ泣きそうな顔をしているのか、何かしてしまったのだろうか 全く思い出せない 「もういいですって言ってるんです!!帰ります!!」 そう言って彼女は何処かへ行ってしまった 頬が少し濡れていたのは気のせいだろうか
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