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和利③
「和利は、顔いいんだからすぐ相手出来るって」
「あー、ありがと」
「じゃあ、また飲もうな」
「うん、じゃあな」
麗奈と別れて、いや実際は付き合ってなかった。
麗奈がいなくなって、心がポッカリ穴があいた。
俺は、気づいてなかった。
麗奈の存在の大きさに…。
馬鹿だな、俺。
「和利君、いつ付き合ってくれるの?」
うんざりはしなかった。
麗奈が、何度も言う言葉…。
「大好きだよ」
これからは、他の奴に言うんだよな。
麗奈…。
別れてから、酒量が増えた。
頑張って、店を持つために働いた。
常に、麗奈の事が頭から離れなかった。
何人か付き合ったけど、麗奈が頭の中にずっといた。
俺は、麗奈の番号を眺めていた。
声が聞きたい。
「大好きだよ」
そう、また言われたかった。
俺は、麗奈に電話をした。
麗奈は、電話に出てくれた。
嬉しくて、堪らなくて、なのに、また俺はそんな言い方しか出来なくて…。
電話を切って、落ち込んだ。
でも、それより麗奈と話せた事が嬉しかった。
何回か連絡を重ねあったある日、俺は麗奈にこう言われたんだ。
『和利君、私ね。付き合ってる人がいるんだ』
「嘘だ」
『嘘じゃないよ。本当だよ』
「だから、連絡するなって事?」
『だって、会ったらそうなっちゃったら困るから』
「そ、そうだよな!ごめん。麗奈、幸せになれよ」
『ありがとう』
「じゃあな」
『さよなら』
遅かった事を知った。
何もかも、遅かった事を知った。
もっと、早く麗奈に連絡しておけばよかった。
あの時、意地を張らずに麗奈を好きだと言えばよかった。
大人になって、色んな人と付き合ったのに、こんなに忘れられない女が現れると思わなかった。
麗奈は、ずっと俺に真っ直ぐだった。
いつも、素直に気持ちをぶつけてくれていた。
なのに、俺はその気持ちに向き合おうとしなかった。
次は、麗奈と向き合いたかった。
あの時は、ごめんって言えたのに、その次に麗奈が好きだったんだよって言えなかった。
俺は、ずっと麗奈が好きだった。
麗奈と手を繋いで歩きたかった。
麗奈と笑い合う未来が欲しかった。
バツイチだから、麗奈の人生を壊しちゃいけないって思ってた。
でも、本当は怖かっただけだったんだ。
いつか、麗奈が俺をいらないって、こんな風に言う日がくるって思ったら怖かったんだ。
だから、俺は麗奈を傷つけて突き放したんだ。
嫌われ方なら知ってるのに、本当に嫌われたら…。
辛くて、堪らなくて、消えたくなった。
麗奈とあの日みたいに繋がり合いたかった。
麗奈とあの日みたいに過ごしたかった。
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