辻村颯

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辻村颯

 4月14日(木)晴れ  と言う訳で、改めましてみなさんこんにちは。岡坂宗介改め、辻村颯16(89)歳じゃよ。  当初は一週間ほど準備に費す予定であったが、そこまでトオイを放置する訳にもいかん。予定を早め、数日の練習にて入学を果たすことと相成った。なぁに。勉学は二の次、三の次じゃ。授業はいかにも聞いている振りをすれば、試験までに何とか学力は追いつくじゃろう。  およそ70年かそこらぶりに、教室の前で自己紹介と言うものを行った。当然、一言一句は雪兎くんが用意した文章じゃ。ちなみに制服は作るのが間に合わなんだため、雪兎くんの中学時代の学ランを羽織っておる。これでも多少大きめなのが、かすかに心が傷つくのう。  まぁ、それは良い。それよりも、トオイじゃ!流石に、トオイと同じクラスにはなれなんだ。生徒もクラスの数も山ほどあるマンモス校だし、そこまでは伊勢嶋さんの権力も及ばなんだと言ったところかの。  待ちに待った昼休みになったので、彼のクラスまで赴いた。一応雪兎くんを通した繋がりはあるため、挨拶をしに行っても不自然ではなかろう。  「岡…じゃなくて、辻村って言います。その、トオイくんはおるかの…。じゃなくて、いますか…?」  えぇい、自分の名前も若者言葉も定着せん。まるで、入れ歯安定剤並に安定せんぞい。流石に、数日の練習期間では足りなんだか…?しかし、トオイのクラスメートから話を聞いてその認識を改めたぞい。昼休みやら放課後、タチの悪い連中に呼び出されては絡まれておるんじゃと。  例の、苛めをしているとか言う連中じゃな!?怒りが、頭の頂点に達したのが理解出来た。えぇい。練習期間など、一日でも多かったわい。待っていろトオイ、ワシが今行くぞい!  廊下を走り回っていると、校舎裏にてトオイが絡まれているのを発見した。相手は数人。いずれも、絵に描いたようなモブ悪役の顔じゃ。断言しよう。仮にここが絶対BLになる世界だったとて、彼らとフラグが立つ機会は金輪際あるまい。そんな事は、どうでもいい。複数で一人を相手にしないと、何も出来ない連中どもが!  二階じゃったが、まぁえぇじゃろ。窓を開け放ち、盛大に身を乗り出して飛び出したぞい。  「覚悟しろ、貴様らー!」
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