辻村颯

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 さて、そんなこんなで夜になったぞい。学園生活を初めてわずか二日じゃが、まこと激動の二日間であったと言えよう。  自室(客室)に戻り、再び考えを巡らせた。若返りが自身のためでないかと言うのは、昼間も推測したとおり。さて、それではどうするか?具体的に言うと、いま求愛されている男性のどちらか(ないし両方)と実際にお付き合いするか?  答えは、断じてノンじゃ!ワシにそのケはないし、ことにトオイ相手は法的に色々とヤバい気がするぞい!  いや、しかし。法律には疎いが、実際どうじゃったか…。確か、三親等以上離れていたらセーフとかではなかったか?ワシとトオイが曽祖父とひ孫の関係なので、三親等離れてるからセーフ?いやいや、どっちみち直系だからアウトじゃわい!  …などと下らぬことを考えていたら、携帯に京平くんからの着信が入ってきた。すでに海外のどこかと思われるが、国際料金とか気にしないんかのう。  「やっほー、ソウスケくん。どうだった?およそ70年ぶりくらいの、学園生活は」  「どうもこうも、ないわい。説明するぞい。トオイの苛め云々は、全くの誤解だっただけでなく…」  ワシは、京平くんに話したぞい。実のひ孫に求愛されたのみならず、その幼なじみまでに壁ドンされ貞操を狙われていると言うことを。  「全く、何たる世の中じゃ…。BLなるドラマが流行っておるのは知ってたが、男同士の恋愛とか抵抗ないんかのう。令和とは、何たる世の中じゃ」  「あのさぁ、ソウスケくん。それなんだけど。君、ずーっと昔から男にはモテモテだったよ…。幼なじみの僕が言うのも何だけど、こうクリクリっと可愛らしい顔してるからね」  「はぁえ?」  耳を疑ったわい。京平くん曰く、ずっとずーっと昔の幼少時代からワシに想いを寄せる男は数え切れない程いたんじゃと。中高では柔道部に所属しておったが、ワシ目当てに入部する輩が一人や二人ではなかったと…。そいつら相手に、寝技かけとったんかいワシ。どいつとどいつであったか、今更ながらに鳥肌立ってきたぞい…。いづみとの結婚が早めだったので、流石にそれ以降は思いを馳せる連中は少なかったようじゃがの。  電話の内容は、そこで終わったが…。昔々告白された時のことを、京平くんに聞くべきじゃったかのう。今日会った笹川縁に、同じ顔をした男のことを…。  やめとこう。京平くんが知っているとは限らないし、例え彼らが親族でも名字が同じとは限らないし。そして仮に親族だと判明したとして、ワシはどう反応すればいいんじゃい…。
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