岡坂宗介

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 「本当じゃ!マジでワシが、若返っておるー!?」  部屋にあった姿見を見て、驚愕したぞい。ワシの姿が、まるで高校生時代に戻って…。まぁ今の高校生と比べると、ずいぶんと背が低いので幼くは見えるのじゃが。  それにしても、当時は意識せなんだが…。こうやって自分の顔を客観的(?)に見ると、なかなかの美丈夫じゃな。これは、男から告白もされるわい。などと、落ち着いておる場合ではない!  正確に何歳かの判断は出来ないが、まずは大学時代についた足の傷がなくなっておる。さらには、声変わりが完了しておらんようじゃからして…。おそらくは今のトオイと同じ、16歳と言ったところかの。  「正真正銘、学生時代のソウスケくんだぁ。本当に、若返りとかってあるもんだね…。長生きは、してみるもんだなぁ」  「やだぁ。若い頃のソウスケさんたら、すっごいイケメン♡ってか、可愛い♡あの。ちょっと、着ぐるみとか着てもらっていいですか?ちょうど、ここの雪兎に着せてたのがありますから…」  京平くん、沙都子さん。あんたら、順応しすぎじゃないかね。まぁ、かく言うワシ自身が不思議と現実を受け入れておるが。この世に神や仏がおるか分からんが、この若返りは何らかの摂理ではなかろうかと…。とりあえず、着ぐるみは丁重にお断りをしておいた。  可哀想に、雪兎くんは開いた口が(関係ないが、彼も八重歯じゃ)塞がらずと言った具合でワシを見つめておる。まぁ、これが通常の反応であると言えよう。  さて、いつまで呆然としていても仕方ない。まずは今晩だけでなく、しばらくは伊勢嶋邸のご厄介になることとなった。なにぶん広い屋敷ゆえ、客室は余っているのと…。若い男性の衣服も、これまたあり余っておる。ご子息四人分の、着古しがあるからのう。  紹介された客室でしばらく今後の動向を考えてから、風呂を頂戴することとなった。バタバタしていて、まだ入っていなかったのでな。  脱衣所で(ちなみに、銭湯くらいの規模の風呂じゃよ)服を脱いでいると、先客の衣服が目についた。これは、雪兎くんのものじゃな。彼もバタバタしていて、今まで風呂に入れなかったものと見える。よし。ここは久々に男同士、裸の付き合いで汗でも流すとしようかの。  「雪兎くん、おるのか?ワシじゃよ。一緒に、入らせてもらうぞい」
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