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「そうじゃよ。この姿になったのも、何かの縁。同じ高校にて、トオイの恋路を応援するのと…。その前に、トオイのことを苛めたとか言う悪漢ども!奴らにこの手でに天誅を下さねば、気が済まん!」
「どうぞお手柔らかに、願いますよ…。ってか、出来るんですかそんな事。ついこないだ、入学式があったばかりですけど」
「実はさっき京平くんと、話は済ませておる。彼のコネを使って、ちゃいちゃいっとな。問題は、学力じゃよ。当初は、柔道での推薦扱いにでもしてもらおうと思ったが…。流石にこの姿では、実績がないからの。君の高校は、県内でも随一の進学校。まずは、最低限授業に付いていけるようにならんと」
「そんな事ですか。いいですよ。俺自身も、成績は悪くない方ですし…。うちには、化け物みたいな偏差値の兄貴が三人ほどいますから。彼らを見てると、勉強って体力勝負であり格闘技だなって思いますよ。彼らにも、教えを請いましょう」
「うぅ。こちらこそ、お手柔らかに頼むぞい…」
「それと、最近の高校生を演じるための言葉遣いと知識ですね。これも、任せておいて下さい。俺に、秘策がありますから。後でまた、俺の部屋に来てください。それでは…」
そう言って彼は、股間をタオルでガン隠しして出ていった。ワシもしばらくは湯船に浸かった後、自室(客室)に帰って…。トオイに対し、メッセージを送った。なにぶん年寄のガラケーのため、LIMEでなくSMSであったがの。
『トオイ。先程は、大変すまなんだ。トオイの言うこともよく聞かず、訳知り顔で世間一般の常識を振りかざしておった』
『そう言った大人は、一番嫌っておったはずだったのにの』
『話は変わるが、言っておった伊勢嶋さんの海外旅行…。あれに、やっぱりワシも参加することになったのじゃよ』
『突然で別れの挨拶も出来ず残念じゃが、この旅行で自分と言うものを一から見直したいと思っておるぞい』
『お前とは、帰国後にゆっくりと話し合いたい』
『なぁに。旅行に行っておる間も、ワシの心はいつだってお前の傍におるよ。それでは、身体を壊さず元気にな』
これで、良しと。今は、一日も早く高校生活に馴染む特訓じゃい…。言われた通り、雪兎くんの部屋に向かうとするかの。
「雪兎くん、ワシじゃ。おるかの?扉を、開けるぞい」
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