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クラスメイトが、落ちてきた。
昼休みだった。
中庭の木陰。お気に入りの場所だった。
そこでお弁当を広げようとしたら、上からガサガサと音がして、葉桜と一緒に、同じ制服に身を包んだ女の子が落ちてきた。
「だ、大丈夫……?」
私とは少しズレた位置に大の字になっているその子を、そっと覗き込む。
お人形みたいな顔だった。
白くて艶のある肌。すっと通った鼻筋。大きな二重の目。長いまつ毛。形のいい眉。
「……また失敗」
薄い桜色の唇が、小さく動いた。
涼しげで透明感のある、山を流れる小川の水みたいな、透き通った声だった。
「何……してたの?」
驚きのあまり言葉が詰まる。
綺麗な唇が、またゆっくりと動いた。
「……自殺」
今度は温度のない、氷のような声だった。心臓が握り潰されるような、辛くて苦しい声。
蝉の声が、やけにうるさく聞こえた。
よく見たら綺麗な顔には、傷がついて血が滲んでいた。艶のある長い黒髪にも、葉っぱと小枝が絡まっていた。スカートから覗く白くて細い足は、痣だらけだった。ブラウスの左の袖からは、包帯が見えていた。
お人形のように綺麗だと思った彼女は、よく見たら傷だらけで、ボロボロだった。
「……や、やめなよ」
気づくと震える声で、そんなことを言っていた。
それがこのクラスメイト……若桜 律花との出会い。
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