花、零散る

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 私はオムライス、律花はサラダうどんを食べながら、私たちは色んな話をした。 「出来たてのあったかいご飯が食べたいんじゃなかったの?」 「……今はうどんの気分」  そんな話から始まった。  他愛もない話だった。  バイトしたいとか本屋行きたいとか、そういえば青ボールペンのインクがそろそろなくなるとか、だったら帰りに本屋さんにでも寄ろうかとか、社会のおじいちゃん先生は実はカツラらしいとか……本当にくだらない、その辺の高校生が話していることとなんら変わらない話だった。 「もうすぐ夏休みだし、どこか遊びに行こうか」  突拍子もなくそんなことを言い出したのは律花の方だった。 「うん、行こう」  私は答える。  食事を終えたあとも、どこへ行こうかと2人で話し合った。  夏祭り、花火大会、ショッピングモール、映画館に美術館……全部行こうと予定を合わせて、空白だった夏休み中のカレンダーはたくさん埋まった。  不思議だった。  今日の昼休みに初めてちゃんと話したのに、放課後のたった数時間でずっと前からの親友のように話している。 「夏休みが終わるまで、自殺はおあずけだね」  別れ際、律花は澄み切った声で嬉しそうに言った。 「もちろん! 死んだら許さないから」  私も笑ってそう返した。  2人で小指を絡めて、「またね」とそれぞれの帰路に着く。  こんなのは初めてで、足取りが軽かった。  痣だらけの脚を震わせながら、反対方向に進む律花には、気づくことが出来なかった。  いや、その後も私は気づくことが出来なかったのだ。会う度に増え続ける脚の痣も、血が滲む包帯を巻いた左腕にも。  律花は傷を隠すのが上手な子だった。  私は傷を見つけるのが下手な子だった。  だから私は、夏休み最後の日まで、彼女の異変には気づけなかった。
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