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ヒーロー人形
アキラは小さいころにおもちゃの人形をたくさん持っていた。
人形をバラバラに壊すのが楽しかった。バラバラになった人形は夜に仕事から帰ってきたお父さんがなおしてくれる。
小学1年生になったアキラは自分の部屋で一人で寝るようになった。
ある夜、アキラは腕の痛みで目が覚めた。
寝ぼけていたので、腕に何かケガをしていたのかと思ったがそんなことはなかった。
自分の腕を単調に叩き続ける音が聞こえた。
その音が痛みの原因だと頭の中で結びつき、片目を開けて腕を見ると、常夜灯の僅かな明かりの中、左の二の腕に人形があるのが見えた。
その人形が腕にぶつかっていただけかと思ったがどうも違う。
その腕がひとりでに動いていたのだ。ただ淡々と小さな手で僕の腕を叩き続けていた。
それはヒーローの人形だった。
ヒーロー人形は僕が目覚めたのに気づき、こちらを向いて喋った。
「二度とおもちゃの腕を取るな。さもないとお前の腕が腐って落ちるまで叩き続けるぞ」
そのとき、僕は首から上しか体が動かなかった。
そのヒーロー人形はお気に入りで一度も壊したことはなかった。
――なんでこいつに怒られるんだろう?
一番大事にしてしていたおもちゃに裏切られたような、やるせない気持ちを感じた。
そうしている間にも段々と腕の痛みが増して、焼けるような痛みに変わってきた。
「約束する。おもちゃの腕を取ったりしない」
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