リヒト

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リヒト

「おじゃましまーす」 「ま、誰もいねぇけどな。カナエも帰ってきてないし」 高校生になったぼくはクラスメイトのリヒトの家に遊びに来た。 階段を上がってリヒトの部屋に行く途中、部屋の扉が開いていた。 「ここは?」 「カナエの部屋だよ」 少し開いた戸のすき間からハサミを持ったクマのぬいぐるみが見えた。 カナエさんはリヒトのお姉さんだ。 リヒトの部屋でカードゲームをしている間もさっき見たクマのぬいぐるみが気になっていた。 トイレに行くといって部屋を出てまたカナエさんの部屋の前を通ると、カナエさんが帰ってきてベッドで横になっていた。 戸を開けたまま眠ってしまったようだ。スカートから出た日焼けした太ももが見えている。 さっきは机の上にあったはずのぬいぐるみが床にあった。床にあったというだけではない。ゆっくりと動いている。お尻を床にこすりつけるようにしてゆっくりと動いている。しかもその手にはハサミが握られていたのでぼくは危険を感じた。 眠っているカナエさんの部屋に勝手に入るのは気が引けた。きっと悪いことをしているし、もし見つかって声をかけられたら・・・ それでも危険なぬいぐるみが彼女を襲おうとしているのを放置するわけには行かない。こんな大義名分があれば女性の部屋に勝手に入ることも許されるだろう。 もっとも、入る前にカナエさんを起こせばよかったのかもしれないが・・・。
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