⑨おじゃまむし?・・・ラスト

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⑨おじゃまむし?・・・ラスト

私は、松木さんと少し遅めの朝食を食べている時にスマホを見ると堀川さんからLINEが届いていた。 『明日、会って話したいことがあるんだけど、時間を都合してもらえる?』 『職場の近くの喫茶店に15時ぐらいなら…』 『明日、その時間に…』 私は、松木さんに堀川さんからのLINEを見せて、 「きちんと私の気持ちを堀川さんに言いますね」 「そしたら…これを…」 そっと指輪のケースを出してきた。 「えっ?」 「本当は昨日渡すはずだったんだけど…」 嬉しすぎて言葉が出て来ない。 さらに松木さんは言葉を続けた。 「改めて言うね。 俺と結婚を前提に付き合って下さい」 「はい」 と言う言葉も涙が次から次へとこぼれて言葉が言えず、頷くことしか出来なかった。 松木さんはケースから指輪を取り出すと、そっと指輪をはめてくれた。 最強のアイテムを授かった気がしていた。 もう堀口さんも怖くない。 私は、早めに喫茶店に来て、コーヒーを飲みながら堀口さんを待った。 「ごめんね、待たせちゃった?」 「ちょっと、早めに着いただけだから…」 堀口さんはケーキセットを食べながら、いきなり切り出してきた。 「私ね、松木さんのこと好きだよ」 急だったため、びっくりしたが堀口さんの話を黙って聞くことにした。 「不思議なんだよね…星川さんって、美人でも可愛いわけでもないのに、いろんな人から好かれてるよね? 私は、それが気に入らないの」 「…(そんなこともないんだけど…)」 「私も同じようにしようと思ってもだめなんだよね」 「………」 「特に咲桜さんからも松木さんからも好かれていて…ずるいと思わないの?」 「何がズルいの?」 まさか堀口さんが、私のマネをしているだなんて思ってもいなかったが、それよりもほとんどの人から堀口さんは嫌われていることに気付いていない事のほうが私は、不思議だった。 でも、そんな事は堀口さんには口が裂けても言えそうもないが…。 「そういう、『私は、わかりません』みたいな態度がズルいっていうの!」 ケーキをぐさりと突き刺す(ケーキには罪はないのに…)。 わからないものはわからないのだが… 。 でも、咲桜さんから好かれていることに関しては、優越感に浸っていたことは否めない。 私は一つ深呼吸をし、意を決して、 「もう少し男性と話をする時は、落ち着いて話したらいかがですか? 自分の年齢を考えた方がいいと思いますよ」 「…」 「私の言動を真似ているのかもしれませんが、年齢が違いますので、周りからしたらイタイ人に見えてると思いますよ」 「…」 「私が、咲桜さんの職場の方々と飲みに行かなくなったのは、堀口さんの飲み方に問題があるんですよ!」 私は、今まで黙っていたことを吐き出すように話した。 ただ、咲桜さん達と飲みに行かないのは、松木さんと付き合っていることを誰にも話していないからでもあったんだけど…。 私は、ゆっくりとコーヒーを飲みながら堀口さんが口を開くのを待った。 堀口さんは、ケーキを食べ終えると、 「言いたいことはわかったんだけど、答えになってないよね? 話をそらして、逃げるつもり…」 「そんなことはないけど、私の気持ちを知ってほしかったの。 私は、計算して動いてるわけじゃないから、堀口さんの言ってる意味がわからないんだけど…」 堀口さんは、深い溜め息をついて、 「わかった。 最後に1つだけ答えて欲しいんだけど…」 コクンと頷き、堀口さんを促した。 「松木さんの事はどう思ってるの?」 「結婚を視野に入れて、お付き合いしてますが…」 「お幸せに…ここの支払いは…奢ってね」 堀口さんは、ケーキを食べ終わりコーヒーを飲み干すと席を立ち店を出ていった。 私は、しばらくしてからお店を後にした。 『もしもし、俺だけど…今、時間いいかな?』 少し怒ったような松木さんの声に私は、少し驚きながら、 『大丈夫ですよ』 『明日、仕事が終わってからって時間あるかな?』 『大丈夫ですよ』 『駅のベンチで待っててくれないかな?』 『わかりました』 『それじゃ、明日』 『はい』 仕事をしながらも、松木さんが何を怒っているのかわからないまま、仕事が終わってしまった。 駅のベンチで待っていると松木さんが何とも形容しがたい顔で近づいてきた。 「お疲れ様です」 「おつかれ。 俺の部屋まで来てくれるか?」 「いいですよ」 私は立ち上がり松木さんと一緒に改札口に入った。 すぐに電車が来たので乗ったが何も話をしない。 何だか怒っている気がするが…何で怒っているのかさっぱりわからない。 そんなことを考えていると松木さんの部屋に着いた。 ソファに並んで座ると、 「堀口さんから電話があったんだ」 松木さんの不機嫌な理由がわかった気がした。 よっぽど、堀口さんの事が好きではないみたいだ。 「堀口さんから今までの気持ちとかを長々と聞かされ、最後にお幸せに…って電話が切れたんだ」 「そうだったんですか…」 唐突な堀口さんからの電話で松木さんは何も言えなかったことに対して苛立ったのだろう。 私は、意を決して、 「昨日、堀口さんにはきっぱりと結婚を前提に付き合ってるって言ったんです」 最後の方は早口になり、恥ずかしくて俯いてしまったが、松木さんに抱き締められて、 「すっごく、嬉しいよ」 松木さんに優しくキスをされた。 機嫌が直ったみたいだ。 「飲み物は何がいい?」 照れ隠しのように聞いてきた。 「一緒に見に行きます」 冷蔵庫まで一緒に行く。 いつものパターンだ。 相変わらず冷蔵庫の中身はアルコール類しか入ってない。 『ジンジャーエール』と『ビール』を出して、グラスに1対1で割り『シャンディガフ』を作っていたら、後ろから松木さんに抱き締められ、 「咲の初めては、俺でいいんだよな?」 恥ずかしくて頷くことしか出来なかった。 「今日は、何もしないから…少しだけこのままでいさせて…」 私は、松木さんの腕にそっと手を絡ませた。 しばらくすると、 「ソファに戻って飲もうか?」 今までの甘い雰囲気を払拭するように言うと、サッサとソファに戻っていくので、私はグラスと『ジンジャーエール』と『ビール』を持って戻り、ソファに座ろうとすると、 「俺のそばに座って欲しいな」 私は、少し間を開けて座ると松木さんがピッタリと横に座り私の肩に腕を回す。 「飲みにくくないですか?」 「大丈夫だよ」 私は恥ずかしくてグラスを見ていると、 「そのネックレス気に入ってくれてるんだな」 「はい」 「そして、指輪も付けてくれてるんだ」 「2つとも私には最強のアイテムですよ。 そうですねぇ…ゲーム風にいうならば、ネックレスは『愛のネックレス』、指輪は『力の指輪』っていったところでしょうか?」 「どうして、指輪は『力の指輪』なんだ?」 私はニッコリと笑って、 「マリッジリングが『愛の指輪』なんでしょう」 少し悪戯っぽく言うと、 「今度は2人で買いに行こうな」 松木さんに手を引き寄せられ抱き締められ、幸せの余韻に浸った。
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