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⑤おじゃまむし?・・・その2
土日は、松木さんの言動に振り回され、月曜日の朝にはどうにかこうにか落ち着いたが、同じ会社なので出会った時の事を考えると落ち着かなかった。
職場に着くと堀口さんが待ち構えていた。
私が堀口さんの側を通り過ぎようとしたら、腕をつかまれ、
「金曜日なんだけど、松木さんがお金を置いていったじゃない?」
「う、うん」
「それを返したいんだけど…」
「私が、渡しておこうか?」
「そんな事言って渡さなかったら困るし…。
今から渡してくる」
と、私に言いたいことだけ言って松木さんのところへ行ってしまった。
「松木さん、おはようございます」
仕事をしている手を止めて、
「おはよう」
チラッと堀口さんを見て、仕事に戻る。
「金曜日のお金を持ってきました」
周囲の人たちは興味津々な感じで2人をみている。
「ありがとう」
と、受けとると、
「また、飲みに行ってもらえますか?」
「ごめん。
金曜日も偶然会っただけだし…、周りに誤解されるような言い方はやめてもらえるかな!!
急ぎの仕事があるし、もうすぐ始業時間だから戻ったほうがいいんじゃないかな?」
松木さんは、何か言いたそうな堀口さんを無視して仕事に戻った。
少しの間、堀口さんは、立ちすくんでいたが仕方なく自分の部署へ戻って行った。
お昼休みに休憩室でお弁当を広げていると、堀口さんが隣に座り、
「朝、松木さんに渡したの」
嬉しそうに言うが、堀口さんが言わなくても松木さんからきっと連絡があるはず…。
「渡せたんだ」
「実は、お金を入れていた封筒に手紙を入れておいたんだ!」
私は、びっくりして食べかけていた玉子焼きを落としてしまった。
「何て書いたの?」
「ひ・み・つ」
教えてもらえなかった。
多分、松木さんに聞いたら教えてくれるような気はしたが、松木さんからの連絡を待つことにした。
堀口さんは、手紙の事が言いたかっただけなのか、その後は、仕事の愚痴を言っていた。
帰宅して、お風呂に入り、部屋に戻りスマホを見ると、松木さんから着信があったので、かけてみたが留守電になっていたため、そのまま切り、スマホのゲームをしていると、松木さんから電話がかかってきた。
『もしもし?』
『あっ、俺』
『お疲れ様です』
『お疲れ!
今、大丈夫かな?』
『はい』
少し言いにくそうに、
『実は、堀口さんからお金を返してもらったんだけど…』
『彼女から聞きました。手紙が入ってたんですよね』
『聞いたんだ』
『お昼休みに堀口さんが嬉しそうに言ってましたよ。手紙の内容は言いませんでしたが…』
『実はさ…
(金曜日は、ありがとうございました。
好きです…キャハッ)
キャハッ…て何なんだ!』
『照れじゃないですか?』
『そういうことじゃなくて、あんた何歳だよってことだよ』
『松木さんと同い年ぐらいだと思いますけど…』
『1つお願いがあるんだけど…』
『はい?』
『キャハッって言ってみて』
『私のキャラじゃないですよ』
『言ってみて』
『もう、仕方ないですねぇ…
一度だけですよ』
『キャハッ…
ごめんなさい』
『ハハッ。
少しテンションが上がったよ』
『もう、絶対にしませんから!』
ふと、時計を見ると0時近かったので、
『もう寝ますね』
『ん?
そうだな』
『おやすみなさい』
『おやすみ、いい夢見ろよ』
いい夢って…どんな夢なんだろう?
松木さんが出てくる夢なのかな?と思いながら電話を切った。
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