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「――――ちわーっす……」  奏人さんが出張に行って2週間と2日経った日の夕方、俺は主の戻らない部屋を合鍵で訪ねた。  あの人のことだからきちんとゴミも片付けてあるし、嫌な匂いがすることはないけれど、昼の暑さで熱された空気がむっと籠って蒸し風呂状態だ。  換気に少し窓を開けてエアコンをつけると少しずつ楽になって、人が居られる空間になる。  ベッドに腰かけて、コンビニの袋からペットボトルのお茶を取り出して首に当てたり飲んだりしているうちにだいぶ涼しくなってきて窓を閉めた。  ここは南向きだけど、西の空が赤いのを見ると、なんとなく虚しさというか寂しさが込み上げてくる。  普段なら夜には帰って来て、または俺がここに来て、一緒に飯食ったりして過ごせるのに、今日はあの人は戻らない。  分かってて、それでもちょっとだけでもあの人の気配を感じたくて、今日は友達のとこ泊まるって親には伝えてここに来たんだけど。  ……本来居るはずの場所に、居るはずの人が居なくて空っぽの器だけあるっていうのは、思ってた以上になんだか切ない。  コンビニで買う時はそれなりに選ぶ楽しみのあった夕飯も食う気になれず、ベッドに横になりスマホを取り出す。  このところ、こっちがおかしいのか、向こうがダメなのか、来てるはずのメールが時々届いてないことがあるので手動で受信してみるけど、何も連絡は入ってなかった。
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