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「……いつ帰んだよ。もう……」
小学生の夏休みじゃないから、別に今会えなくても来月までまだ休みはあるんだけども……。
正直、自分がこんな奴だったとは思ってなかった。
恋人がちょっと仕事で離れたところに行ってるくらい、割り切って流せるもんだと思ってたのに、落ち着かないし、寂しいし、夜も向こうの研究室の人たちに飲みに連れて行かれたり、または遅くまで仕事してたりであんまり電話でも話してないし。
それは、なるべく早く帰れるように根詰めて作業してくれてるってことかもしれないけど――――。
「普段あんだけヤキモチ焼きで、自分はしょっちゅう電話してきて俺に甘えるくせによぉ……」
天井に向かって、はぁ、と溜息を投げかけるけど自分に返って来るだけだ。
冷房、何度に設定してあるんだか結構涼しいので布団に潜り込むと、あの人の匂いがした。
無いはずの温もりが感じられる気がして顔埋めてると、ふと最初にここに来た夜のことを思い出した。
お茶飲んでしばらく話してから、先に風呂入らせてもらって、なぜかたまたま都合良くあった新品のスウェットを借りて。
しかもなぜかあの人より身長ある俺にぴったりのサイズで。
「……これ、もしかして、いつか俺が来るかもと思って買っといてくれた?」
意地悪のつもりで聞いたら
「さあ。たまたま間違えただけかもね」
ってはぐらかされたけど……ともかく、それからあの人が風呂入る時
「湯冷めするといけないから、ベッドに入ってていいよ」
と言われて、その通りにしてた時のことだ。
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