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奏人さんという人は、元々少食なのもあり普段からあまり人間としての営みを感じさせないせいか、たとえば冬のこの時期コートを脱いでも、ふわりと甘く鼻の奥をくすぐられるような、むしろ鼻近づけて嗅ぎたくなるような、そんな感じなんだけれども。
今日恋人同士になって、初めて潜り込んだ布団でその相手の匂いに包まれて、俺は物凄く興奮してどきどきして胸一杯にあの人の空気を吸い込んだ。
客観的に見て自分がやってることが変態ぽいと気づく余裕はなかった。
布団抱きしめて、あの人が毎日ここで寝てるんだと思って、ここで毎日何考えてたんだろ、少しは俺のことでも思い出してくれてたんだろうか、などと想像していた俺は次の段階としてあらぬことを想像してしまった。
自分がそうしてるように、あの人もここで、男なら誰でもすることをやっているんじゃないかと。
好みのオカズで自らの欲求を処理する、あれだ。
あのいつも穏やかな笑顔浮かべてる人が、ここで息を乱して、熱を持て余して、その熱を吐き出そうと自らの手で――――。
考えるだけで下半身が疼いた。
やべえ、と思うけど、一度始まってしまった妄想は止められない。
あの人が、あの形の良い唇を歪めて、紅い舌をのぞかせて、白いうなじに汗を滲ませて下着の中をまさぐる姿とか、ぬるついた手とか、次から次へと妄想が広がり、知らぬ間に溜まっていた唾を飲み込み自分の下腹に手を伸ばした時、バタン、と風呂場の戸が開く音が聞こえて俺は布団の中で飛び上がった。
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