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「だったら、きみに任せるよ」
ちょっとムッとした様子が伝わったので、袋剥いて真ん中で割ると見事に2対1くらいの不恰好な形に割れて、奏人さんが笑う。
「その小さい方でいいよ」
「マジで?足りんの?」
キスやセックスだけじゃなくて、この人が居る日常そのものが、俺にとって何にも代えられないものだってこと。
「夏だし、ちゃんと栄養取らないと倒れねえ?」
「十分だよ。向こうに居る間、これも食べろ、あれも食べろって色んなもの勧められたからね。しばらくは減らしたい気分だよ」
「……あんた食細いから、体のためにはそういう周りが構ってくれる出張の方がいいんじゃね?」
「毎日独身女性に囲まれて世話を焼かれる生活を、僕に一か月も送って欲しいかい?」
「……いや、……じゃあ、やっぱ早く一緒に住もう。そんで俺がちゃんと飯食わせるから」
「作るのは僕だけど?」
「……それまでに、練習しとく」
「楽しみにしてるよ」
そう言って微笑んだ奏人さんは本当に嬉しそうで、俺は早くそれが叶えられるように、俺の出来ることをやって行こうと思ったのだ。
ずっと、この人と居られるように。
『空っぽの部屋で君を待つ』了
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