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いや、実際飛び上がりはしないけども、それに近い心地がして、全身心臓になったみたいにばくばくと鼓動が響いて、冷や汗が首筋を伝う。
それから少しして出てきた奏人さんは
「……布団、それじゃ寒かったかい?」
と俺に声をかけた。
「え。いや、別に」
「それならいいんだけど、頭までかぶってるから寒いのかと思って」
「あ、いや大丈夫」
顔出したら、むわっと籠ってた熱気が溢れて頭にかいてた汗が冷えるのが分かって、自分が今どれだけヤバかったかと気づく。
奏人さんは、ふっと笑って言う。
「まあ、もっとも狭いところに二人で寝るなら、いつもより暖かいだろうから寒い心配は要らないね」
「あ、うん……」
その声は嬉しそうで、不埒なことを考えてた自分を猛烈に反省するけど、下はそんなことはおかまいなしに中断を責めるように存在を主張したままだ。
「電気、消すよ」
明かりが消えて、奏人さんが布団に入って来て、俺は端に詰めるふりをしながら壁の方を向いて体を丸めた。
「やっぱり、男二人じゃ狭いね」
なんか楽しそうな声がして、うん、と生返事をすると、少し間があって
「……どうかした?」
心配そうに、奏人さんが言った。
「え?」
「……それは、恥ずかしいのか拒絶なのか、どっち?」
言われて、焦って顔だけ振り返った。
「や。違う!……あー……顔、見らんないだけだから」
奏人さんは一瞬きょとんとして、笑う。
「可愛いねえ。匠海は。じゃあ、僕がそっちに行こうか」
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