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「は?」
嫌な予感がして身をすくめた途端、後ろから抱きしめられた。
ふわりと風呂上がりの熱と石鹸の匂いのする体に包まれたら。
あったかいし気持ちいいけど、今は、まずい。
さっきまで妄想してた相手からこんなことされて平気で居られるわけがない。
ますます張り詰める己自身を隠すように身を丸めていると
「……風呂、熱かったかい?」
うなじのあたりで声がした。
「いや、熱くない。ちょうど良かったけど、なんで?」
少し考えるような間のあと
「……なら、いいんだけど、ずいぶん体熱いし汗かいてるみたいだから、のぼせたのかと思って」
頭の後ろ、奏人さんの前髪が擦れるのが分かって、めちゃくちゃ焦る。
自分が汗臭いというか、それより、何をしてたかバレるんじゃないかと。
ごまかしたくても頭が真っ白になって何も言えず、背中を冷や汗が伝う。
と、ふいに首筋に柔らかいものが触れて、濡れた感触になぞられて、びくりと勝手に体がふるえた。
うなじに吐息がかかって、前に回された手が脇腹から腰を撫でる。
どきどきして、隠そうとしてたものが余計に隠せなくなるのを感じていると、耳元に唇をつけて囁かれた。
「もしかして、何か恥ずかしいことをしてたのかな?僕に言えないような」
「ッ……」
「うん?」
するりと腰にあった手が前に回って、今現在俺が抱える問題の核心に、触れた。
「ひっ」
「ああ」
と低く納得したような声。
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