プロローグ

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プロローグ

 しんしんと雪が降り続いている。  ケモノ耳と尻尾を持つ、亜人{あじん}たちが暮らす現代の街は、白く染められていく。今日はクリスマスイブ。  とあるアパートの一室では、若い青年たちが布団の上で絡み合い、汗を流している。二人は後背位で混じり合っていた。 「……っ、かなりきついんだな……。リスオ、力を抜いて」  ライオン属性の半獣人、獅子倉王{ししくら・つかさ}が言った。獅子耳と尻尾がついた、逞{たくま}しい男だ。彼はいま、やっと想いの通じ合った恋人と一つになったところである。 「んっ、ん……。キング……」  背後からのし掛かられた方、リス属性である栗田{くりた}リスオが甘く喘いだ。リス耳にふさふさの尻尾を持つ、可愛らしい青年である。  キングとは、獅子倉の呼び名である。王様の王と書くから、キングなのだ。  リスオは最大まで脚を開き、誰も受け入れたことのない場所を晒{さら}していた。そこにキングの熱杭が打ち込まれている。 (やっと、キングとひとつになれた……)  童貞処女のリスオは、例えようもない幸福と、湧き出てくる確かな快感を味わっていた。ゆっくりと抜き差しされて、甘い痺れに酔いしれる。 「素質があるな。上手だぞ……なかが吸い付いてくる」 「ん、あっ、あっ……あぁ……っ」 「可愛いリスオ、俺の運命の人……。お前以上の相手は決して現れない。なあ、このまま番{つがい}契約を結んでいいか?」  真剣な顔をして、キングが言った。アメジストのように綺麗な瞳で、リスオを射貫く。 (番契約……!)  リスオは驚きに息を吸い込んだ。  番契約とは、半獣人社会における究極の愛の誓いである。うなじを噛むことで成立し、決して破れない。 「どうか、いいと言ってくれ。俺にはお前だけなんだ……」  キングが切なげに、リスオの白い背中にキスをする。 (キングがおれに懇願してる……。あんなに強引だった奴が……)  リスオは胸が熱くなった。自分もキングに恋をしている。なら、答えは一つしかない。 「して、お願い。おれをキングの運命の番にして……!」 「いいのか……?」 「いいに決まってる。おれだって、キングが大好きだから……っ、あっ、あんっ」 「そういうところ、大好きだぞ……。愛してる。一生大切にする。リスオについていける男は、俺しかいないからな」  キングがニヤリと笑った。  なんて偉そうな求愛の言葉だろう。けれど、それが俺様気質な彼らしい。 (大好き……。キング) ――おれたちやっと両想いになれたんだね……。 ――おれ、生きていて良かった。キングと恋人になれて、本当に良かった……。  リスオは紅茶色をした大きな瞳から、ぽろぽろと涙を零した。喜びと、幸福の雫だ。 「じゃあ……噛むぞ」 「う、うん……。……あっ、あんっ……待って、急に激しっ……!」  最奥を男根で抉{えぐ}られながら、リスオは喘いだ。そして、うなじに彼の八重歯を感じた瞬間、達してしまった。  甘やかな熱い大波に攫{さら}われながら、リスオは快感に目を細めた。何故か、キングと初めて逢った日のことを思い出す。 (おれ、あの時……ケンカして良かった。あいつに噛みついて、良かった……) ――あんなめちゃくちゃな始まりだったのに、キングはおれを好きになってくれた……。  今考えれば奇跡のような出逢いである。ケンカをきっかけに始まった恋。その後も、謝罪を口実にケーキ作りを依頼してきたり、無理やり同棲に持ち込んだりと、キングの愛し方は強引だった。  でもいつの間にか、リスオはそんな彼の求愛行動を受け入れ、恋心を抱くようになった。 (ほんと奇跡みたいだ……) ――ありがとう、キング。おれを好きになってくれて……。嬉しいよ。 ――おれも、お前が好き……。大好き……。  リスオはそっと目蓋{まぶた}を降ろした。その心は強引だが暖かい愛に満たされている。
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