○○が落ちてきた

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けれども、立場を気にしなくて思い切り遊べる時間(勿論、使用人側は忖度混み)を一秒でも無駄にしたくはないという坊っちゃんは、何でもいいから遊びたか!と両手をブンブンとして大口にそんなことを言う。 弟君も坊っちゃんほどではないにしても、両手の平を拳にして、胸の位置でキープして力強く頷いていた。 そんな弟2人組を見て、思い付いたといった調子で、お兄様が口にしたのが、屋敷の敷地内の冒険及び散策となる。 寄宿学校(ボーディングスクール)に進学なさってから、新しい御屋敷にお越しになって月の満ち欠けが一回りするけれども、郊外の敷地は近隣の森を含むほどに広大で、地図上では知ってはいても実際には行ったことがない状態でもあった。 それは屋敷の使用人達も同様で、普段使うところが確りと掌握できていれば良いと言う、良く言えば鷹揚で、悪くいうなら不用心とも思える判断からでもある。 その上で、屋敷の主である旦那様も奥さま多忙で、屋敷の使用人達も敷地が広くてそこまで手が回らないと言うのも正直なところでもあると思う。 奥様は、それは良いわねと、最初は言っていたんだが直ぐに表情を曇らせる。 森については、いつかは調査をしなければいけないと思いつつも、手が出せない状態ではあるから、遊びの延長でも軽くでも前もって調べるのは悪くないとは考えた、けれども、やはり子供だけでは剣呑だと考えを改めたというのが、奥さまの表情から伺えた。 確かに、子供達だけになるし、何やかんやでこの面子では俺が一番の年長となる。 単純に俺が年度の切り替わる初日生まれなので、学年としても同学年の兄君でも、どうにも年下になってしまうのだ。 ただその話になった際に兄君が 『"年上の女房は(かね)の草鞋を履いてでも探せ"というのがあるからなあ』 と口にして、坊っちゃんにその意味を説明したのなら、そのまま目が輝き、兄君からも意味深長視線を向けられたような気がするけれども、気がついたらめんどくさいことになりそうだったから、俺が全力で気がつかない振りをしたのは、また別の話だ。 閑話休題。 奥様が子供達だけで森を探検させる決断を迷っている時、そこに改めて口を挟むのは、我らが神父様になる。 「それならば、極めて限定的な場所と、時間を決めておきましょう。 坊っちゃんでも説明が出来る近距離と制限をかけてしまえば、何かあったのなら救助も向かいやすくしていれば万全ですし、何なら私もその時間までこちらに残りましょう」
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