2人が本棚に入れています
本棚に追加
それから俺たちはほぼ毎日のように会っていた。話をしなくても、お互い同じ空間で、歌の練習や絵を描くことが楽しくなっていた。
そして、中学校に入学した日も俺たちは夕方に会った。
公園にはもうリーフが来ていて、桜が舞う中、スケッチブックを開いていた。まだ会って数日だというのに、制服を着ているリーフはなんだか大人っぽい。
「リーフ!入学おめでとう!今日も絵画教室?」
「ネオンもおめでとうね!今日は絵画教室はお休みよ。…ネオンに制服みてほしくて。セーラー服よ!素敵でしょ〜!」
「う、うん素敵…似合ってる!」
俺はなんだか顔が赤くなってしまった。
「ネオンのとこはブレザーなのね!ブレザーもいいなぁ。」
リーフがまじまじとみつめてくる。俺は恥ずかしくなって顔を背けてしまった。
「そうだ!私とネオンの絵、描いていい?」
「え?」
「この制服を着てる私たちの絵!絵画教室で人物の描き方も習ったの。ねぇ記念に描いていい?」
「う、うんいいよ…」
俺は嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちになった。でも素直に嬉しい。
「そうだ!俺はリーフのために歌を歌うぞ!俺のお気に入りの歌!」
俺はリーフの目の前に立って歌を歌いはじめた。
「歌を聴きながら絵を描けるなんて幸せよ〜」
リーフはにこにこしながらも真剣に鉛筆をはしらせる。
「うーん、ネオンは描けたけど、私自身が描けない…手鏡持ってくればよかった…」
リーフがうなる。
「お、俺が描こうか?下手、だけど」
「いいの?頼む!」
リーフはスケッチブックと色鉛筆をこちらに渡す。
「私、歌うね!」
リーフは俺の目の前に立って歌いはじめた。透き通ったきれいな声だ。だが…
「ちょっと音痴だね。」
「ひどーい!」
リーフはほっぺをふくらませながらも、楽しそうに歌い続ける。
俺はリーフが描いてくれた俺の絵の隣にリーフを描く。すごく難しい…
「できた!」
俺はなんとか描き終えて、満足げにリーフに見せた。
「おぉ!…ちょっと輪郭が崩れているね、あとバランスも悪い」
「ひでぇや!」
「でも素敵よ〜」
2人で顔を見合わせて笑った。気づけば日が沈んでいて、電灯の灯りがぽつぽつとつきはじめた。
「帰らないとな。今日は入学祝いに外食するんだ」
「あら、うちもよ。お互い楽しみましょうね!この絵、コンビニでコピーしてネオンにあげるわね!」
「本当!?わー写真撮るよりずっといいや!」
俺はばんざーいと両手をあげた。
「次会った時に渡すね!じゃまたね!」
最初のコメントを投稿しよう!