小さな夢

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夏の太陽がまぶしく、気温が高くなってきた頃、最初の歌が完成に近づいてきた。初めてで、作曲についていろいろ調べながら進めていた。行き詰まることもあったが、試行錯誤しながら頑張った。 「できた!」 夏休みに入る1週間前、ついに完成した。曲も歌詞も自分で考えた、オリジナルの歌だ! そして同時にドキドキしてきた。 俺は決めていたことがある。 この歌をリーフに聴いてもらって…こ、告白するんだ! 俺は自分の気持ちに気づいていた。一緒に過ごすうちにリーフのことが好きになっていたのだ。彼女の姿をみると心臓が跳ね上がったような感覚があり、いつもより鼓動がはやくなる。顔をみると頬が熱くなる気もする。これが恋というものか…と思った。初恋だ。 公園に出かけようと玄関に手をかけた時、母親が声をかけてきた。 「ちょっといい?大事な話が。」 「帰ってからじゃだめ?」 「大事だから、今。こっちにきなさい。」 俺は渋々靴を脱いで母親について奥の部屋に入った。 「父さん、転勤になったの。申し訳ないんだけど、転校しなきゃいけないの。で、転校先の学校を決めたのよ!あなた歌が好きでしょ。そこの中学、合唱部が有名で、コンクールでも金賞続きなんですって!」 母親は誇らしげに言ったが、俺は喜べない。 夏で暑いはずなのに、なんだか体が寒い。クーラーが効きすぎているのか? 「夏休み明けから新しい学校よ。先生にも言ってあるわ。来週、夏休み前の最後の登校日にお別れ会を開いてくださるそうよ。」 その日、俺は公園に行けなかった。突然の転校のことで、頭がいっぱいになってしまって、体が動かなかった。 新しい学校のこと、生活のこと、新しい友達ができるか不安なこと、そして何よりリーフに会えなくなってしまう。 リーフにこのことを伝えないと。 しかしタイミングが悪いことになかなかリーフには会えない。そういえば俺の学校より早く夏休みが始まって、美術部の合宿に行くって言ってたっけ…
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