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楽しい日々
時は経ち、俺は大学生になった。親元を離れ、とある芸術大学に通う大学4年生だ。秋も深まり、もう卒業後のことを考える時期。俺は音楽の道へと進むことにした。
自分で作曲し、歌う。専攻は音楽の「実技系」だ。作曲や声楽、指揮やミュージカルなども習う。
何曲か作詞作曲もした。なかなか難しいが、コツもつかんできた。しかしなんだか物足りない気もしていた。完成しているのに完成していないもやもや感…
「今日も授業面白かったなぁ。しっかしあの先生、課題出し過ぎだろ…」
「だよな!しかも明後日までだなんて短かすぎるぜ!」
俺は友達の天崎優斗とぐちぐち言いながら歩く。
「あ、俺この後バイトだから。」
優斗が腕時計を見ながら言った。
「まだ早くない?そういえばおまえ、気になる子がバイト先にいるって。早く行って会いたいんだな、このこの〜」
俺は肘でぐりぐりと優斗の腹をつつく。
「バレてるよなぁ、ははは!おまえも恋しろよ〜この大学結構かわいい子いるからさ!」
友達と笑い合って別れた後、ぽつりとつぶやく。
「忘れられないんだよなぁ…」
その時、後ろから誰かがぶつかってきた。
「あ!ごめんなさい!」
振り返ると何枚もスケッチブックを持った女性が申し訳なさそうにこっちを見ていた。
髪が長くていい匂いがふわりとした…
「ちょっと前を見てなかった…本当にすみません。」
「あ、いえ。」
すると強い風がふいた。その人が持っていた紙が手を離れ、ひらりと飛んでいってしまった。
「しまった!あ、じゃ、失礼します!待てー!」
女性は走って行ってしまった。
「美術専攻の人かな?…あ、木に引っかかった!…取ってやるか。」
俺はさっきの女性に駆け寄ると木に引っかかった紙をとってあげた。
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