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「ありがとうございます!」
女性はお礼にと、カフェでコーヒーを奢ってくれた。
「ここまでしなくても良かったのに…でもありがとう。」
俺は緊張しながらコーヒーを飲んだ。
「とても大事なものだったので、すごく感謝してます。なんたって今日の18時までに提出しなきゃいけない人物画でして…」
「18時ってあと2時間か。」
「あとは手の部分だけなんだけど、納得いかなくて何度も描き直してて…」
俺には上手に描けているように見える絵だ。よほど熱心に向き合っているんだな…
「あのちょっとお願いが。手をこのようにしてみてもらえます?」
「え?こう?」
俺は言われたとおりに手を出した。
「あー!いい感じ!ちょっと失礼。」
彼女は紙に鉛筆をはしらせる。
俺はなんだかその顔に見とれてしまった…?
「いい感じに描けた!ご協力ありがとうございます!」
とても嬉しそうにお礼を言われた。
「お、おう。そうだ、俺は大学4年なんだけど、きみは?」
「あ、私も4年。美術専攻だよ。木村花恵っていいます」
「俺は小川時音。音楽実技専攻さ。」
「音楽!へぇ〜歌作ったり歌ったりするの?」
「そう!歌も歌うし、作曲もしてるんだ。でもこれがなかなか難しくて」
「いいなぁ聴きたいなぁ!」
「じゃあまた会う?今度ゆっくり聴く?連絡先、交換、しちゃう?」
俺は思い切って言ってしまった。
「するする〜。」
木村さんはニコニコと携帯電話を取り出した。
は、初めて母親以外の女性と連絡先を…ちょっと気分が高揚する。
その時、ある少女の顔が浮かんでちょっと苦しくなった。
「あ!小川くん!おはよーう!」
次の日、木村さんが俺を見つけて声をかけてくる。
「木村さん!おはよう」
俺も挨拶を返す。
「え?え?か、彼女?おま、いつの間に!」
と一緒にいた優斗が驚いて聞いてくる。
「ち、違う!昨日ちょっと知り合って…」
慌てて訂正する。
「そうですよ〜私、好きな人いますし!」
と木村さんがニコニコして言う。なぜか俺はちょっとガッカリした。ん?なぜガッカリしてるのか…俺はあの子が忘れられないのに…
「なんだ〜残念。親友の恋を応援したかったのに」
と優斗がいう。
「といいながら、何ほっとした顔してんだよ」
と俺が笑いながらツッコむ。
「いや〜なんか焦るなぁと思って」
そのまま3人で校門をくぐる。
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