草壁 ジェインCEO、おにぎり娘、柊 壱花に出逢う

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草壁 ジェインCEO、おにぎり娘、柊 壱花に出逢う

『視察とか言っちゃって、要するにただのバカンスだろこれ! どうせまたまた新幹線でナンパするんだろ? このがっつきCEOめ!』 大きすぎる相手の声が、スマホのスピーカーを揺らす。その声に張り合うようにして、草壁(くさかべ)ジェインは、 「リモート会議だけだと末端の雰囲気まで伝わってこないんだよ。たった一週間の代行だぞ? 慎之介、おまえならできる」 「当たり前だ。俺をいったい誰だと思ってるんだ。さいと、」 「慎之介! 悪いが俺が留守の間、ASQ社との契約の件、頼んだからな。じゃあ行ってくるよ!」と、早口で通話を終わらせた。 京都行きの新幹線のデッキの壁に、背をもたせかけていたジェインは、スマホをスーツの胸ポケットへと滑り込ませると、自分の座席へと向かった。もう一度チケットを出し、席の番号を確認する。 「えっと……Eの、」 煙草は吸わない。吸おうと思えば吸えるのだが、吸うと女受けが悪くなるからだ。 (まだ先か) 普通車両は、通路が狭くて歩きにくい。 ジェインは黒のボストンバッグを前へと抱え直すと、禁煙車をずんずんと進んでいった。 グランクラスの予約が取れなかった。しかも、グリーン車もだ。見回すと、普通車もほぼ満席状態。 「仕方がない。たかだか数時間の我慢だ」 着痩せするタイプだから、ジェインのスーツ姿はすらっとして見える。だが、週に二度しか通ってはいないのに、ジムで鍛えた身体は意外とがっちりしていて、普通車の席だと窮屈なのだ。 ジェインは自分の席を見つけ、立ち止まった。 「……失礼」 席にはひとり、女性が座っている。組んだ足はスラリとして長く、赤毛気味の茶髪のロングな巻き髪が、大人の色気を醸し出している。女性が顔を上げると、あら、と口元を緩めた。
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