神の溜息

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スネイクの銃から放たれた青い閃光は秋場の車に向かって走り、指紋認証のドアセンサーシステムだけを破壊した。 「おいおい、年寄りに煙草も吸わせず、車も使うなとは酷い奴だ」 「いえ、どこから見ても貴方はまだ若者です。今のうちに禁煙しましょう。 そんな事より、素敵なバカンスに浮かれて今朝のニュースを御覧になられていないのでは? トーラ様の危機をまさかご存じない?」 「いやあ知ってるさ。 悲しいニュースは嫌いだけどな」 「ならば、この国の味噌汁の香りの様に、トーラ様への愛も貴方の中から消えたのでしょうか? 或いは私の射撃の腕もお忘れになられたのでは?」 「どっちも我が家の味噌汁の味と同じくらいよく覚えてるよ。 『Rainbow Fang』を持つ最強のガードマン、それがお前さ。離婚するまでは俺だってお前のご主人様だったんだ」 スネイクの持つ万能銃、その名は虹の牙( Rainbow Fang)。 秋場に怪我をさせずに電子煙草のスティックだけを打ち抜いた超技巧(アーティスティック)モード。 磁気嵐を起こして各種センサーを破壊する電子破壊(サイバーキラー)モード等の各種機能を搭載した、銃を越えた兵器だ。 「次は心臓を狙って鉛玉(クラシック)モードかい?」 「出来ればそんな事はしたくありませんが、私達の約束も覚えておいででしょう。 私はトーラ様をこの身を賭して守り抜くと貴方に誓った」 「約束を守る為に、その約束をした相手に銃を向けるのか。ややこしいな。 しかし、ここでお前に撃たれるなら禁煙する意味もないな」 「明日も健康に暮らすのは簡単ですよ。 貴方はお持ちになっているはずです。 お願いです、トーラ様の……」 「嫌だ、と言ったら?」 ──ボッ── Rainbow Fangは超音波切断(レーザーメス)モードを発動。 放たれた赤い光線は惜しげも無く秋場の首をすっぱりと切断した。
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