神の溜息

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「最強かどうかは知らんがさすがに疲れたよ。お前が本気なのは分かったから、ちょっと一服しようぜ、なっ」 「一服するなら喫煙所で。良い場所があります、こちらへどうぞ」 話している間に秋場は両手を自分の胸へ。ずぶずぶと彼の肉に食い込む指先。 命令された様に体を包む鮮血と、ブーンと響く電子音。 「ちえっ、見張らなくても俺はポイ捨てなんかしないが…… お前と話し合うには場所を変えた方が良さそうだ」 瞬く間に秋場の手脚はしなやかなネコ科の猛獣のそれに代わり、目にも止まらぬジャンプで住宅の屋根へ跳び上がった! 「豹の遺伝子を借りたのですね。 待ちなさいDr!」 未来。 人類は「あらゆる生物のあらゆる部品」の完全なコピーを造り上げる事に成功。 皮膚、骨、筋肉はもちろん、各種臓器……心臓や脳細胞にいたるまで、使い古し衰えた部品を交換する事で平均寿命は158歳まで伸びた。 「使い古された言葉だな。 待てと言われて待った奴が知り合いにいるのかい?」 だが。 秋場の様に首をすげ替えたり、他の動物の細胞や遺伝子を一時的に借りる事すら可能にした者まで存在する人類だが、それでも永遠のテーマである『不老不死』は叶わなかった。 どうしても干からびて、尽きてしまうものがあるからだ。 それが『命』。 しかし。
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