神の溜息

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夜行性の目をルビーの様に光らせながら、屋根の上を矢の様に駆ける秋場。 「しかし便利な銃だな。俺が子供だったらデパートでひっくり返って親にねだってただろうよ」 「そちらこそ羨ましい。私の名前はスネイクですが、叶うならライオンになって草原を優雅に駆けてみたかった」 獣の運動能力に人間の知恵を持つ秋場は、スネイクの狙撃を紙一重で躱して駆け続ける。 多少命中してもすぐに治癒してしまう上に、その背中にはリクガメの強固な甲羅まで装備している。 「こんな素早い亀が何処にいますか。 しかしDr……見損ないましたよ」 「何が?ライオンじゃなくて豹に変身してる事かい?」 「神の溜息で復活出来るのは、複製を造られた本人のみ。 しかし、バハワヒ島にはその美しさに似合わぬ者達が集い、よからぬオークションが開催されているらしいですね?」 ガシャン! スネイクの銃がひときわ大きな音を立てる。 「おいおい、やめろよ正気か?」 それは携帯式無反動砲(バズーカ)モードに切り替わった事を知らせる音。 「ネットオークションで人のDNAさえ買える時代です。 トーラ様の美しさを手に入れ、金に換えようとする連中から私はあの方を守り続けて来ました。 美しいトーラ様の美しい神の溜息なら、前例がない程の高値で取引されるでしょう…… だが、そんな事はさせないっ!」
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