軍師の嫁取り 5~戦の前に誤算あり~

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司馬徽(しばき)先生、もしや……」 「ん?これは、徐庶(じょしょ)と言ってなあ、母親思いの、良いやつよ。つまり、劉備殿、義に熱い男ぞ。お主に、うってつけじゃろう?おお、勿論、優秀である」 あっ、と、劉備は、うっかり、呟く。 肩の力が抜けた。てっきり、探している、伏竜鳳雛(ふくりゅうほうすう)たる、天下をも取れるであろう人材と、思ったからだ。 その、少しばかりの失望感は、当然、司馬徽にはお見通しで、 「こやつは、使い勝手が良いぞ?そして、本命の、友人でもある」 さて、どうする?と、挑戦的な視線を送られ、劉備は、正直、戸惑った。 師の勧めを受ければ、本命である、伏竜鳳雛目当てに、この、徐庶という男を側に置くと、思われるだろう。 かといって、ここで、断れば、もしや、言葉通り良き人材を失う事になるのかもしれない。 「ははは、すまぬ、すまぬ、劉備殿。そう、困らんでよろしい。深い意味はないのじゃよ、単に、弟子可愛さでな。この男は、かなりの苦労人。そろそろ、仕官させてやりたいのじゃ、それだけのこと。ただ、本命は、まだ、雛でなぁ。才は、あるが、それは、競いあって伸びるもの。この、徐庶は、まさに、好敵手なのじゃ。こやつが、本命を、思いの外、伸ばすかもしれぬ」 言って、司馬徽は、ふっと、笑った。 そして、やり取りを見ていた、徐庶は、 「先生!諸葛亮(しょかつりょう)の事ですか!あいつは、確かに、伸びます!恐ろしいほどの才をもっている!私など、足元にも及ばない!」 と、叫んでいた。 どうじゃ?お主に、うってつけの人材じゃろう?と、司馬徽は、目を細めた。 確かに。 自らを前に出すことなく、友とやらを、推挙するとは、この、徐庶という男、かなりの器の持ち主だ。 知力は、いくらあっても、無駄にはならない。師匠が、才を認める男、徐庶を側に置いても問題はないだろう。 「……仕官を希望していると、聞いたが、どうだろう、私の力 になってもらえまいか?」 劉備の言葉に徐庶は、二つ返事で承諾するが、あー、と、何やら口ごもった。 「条件があるのだな?構わないい、言ってみなさい」 「では、友の、諸葛亮に、お会いください。あやつこそ、伏竜鳳雛、ついでに、名士とも、繋がりがございます。才、あり、財への繋がりあり、なのですが……」 ん?と、劉備は、首を傾げる。 会えと言いつつ、何を渋っているのだろう。 「あーー、今は無理だわ!絶対に!あー、先生、その事で、どうすれば良いのか、お知恵を拝借に来たのです!」 と、なにやら、深刻な流れになっている。 訳がわからぬ劉備は、 「まあ、とにかく、その者に会わぬ事には……、そうだ、共に、登城してもらえぬか?」 と、言った。 「あーー!ますます、無理です!とにかく、今は、無理なんです。いや、その無理はいつまで、続くやら。私の手には、終えませぬ!どうぞ、劉備様が、お運びください。そして、事をお確かめください!」 ははは!と、困りきる弟子の姿に、司馬徽は、腹を抱えて笑っている。 そういえば、(なつめ)が、どうのと、揉めていたが、孔明は、劉備に対して、さらなることを、やらかしたのだと理解した司馬徽は、 「どうじゃ?劉備殿、足を運ぶのも一興ぞ?」 何か、隠しているような、妙な空気が引っかかったが、劉備は、では、と、返事をした。
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