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「司馬徽先生、もしや……」
「ん?これは、徐庶と言ってなあ、母親思いの、良いやつよ。つまり、劉備殿、義に熱い男ぞ。お主に、うってつけじゃろう?おお、勿論、優秀である」
あっ、と、劉備は、うっかり、呟く。
肩の力が抜けた。てっきり、探している、伏竜鳳雛たる、天下をも取れるであろう人材と、思ったからだ。
その、少しばかりの失望感は、当然、司馬徽にはお見通しで、
「こやつは、使い勝手が良いぞ?そして、本命の、友人でもある」
さて、どうする?と、挑戦的な視線を送られ、劉備は、正直、戸惑った。
師の勧めを受ければ、本命である、伏竜鳳雛目当てに、この、徐庶という男を側に置くと、思われるだろう。
かといって、ここで、断れば、もしや、言葉通り良き人材を失う事になるのかもしれない。
「ははは、すまぬ、すまぬ、劉備殿。そう、困らんでよろしい。深い意味はないのじゃよ、単に、弟子可愛さでな。この男は、かなりの苦労人。そろそろ、仕官させてやりたいのじゃ、それだけのこと。ただ、本命は、まだ、雛でなぁ。才は、あるが、それは、競いあって伸びるもの。この、徐庶は、まさに、好敵手なのじゃ。こやつが、本命を、思いの外、伸ばすかもしれぬ」
言って、司馬徽は、ふっと、笑った。
そして、やり取りを見ていた、徐庶は、
「先生!諸葛亮の事ですか!あいつは、確かに、伸びます!恐ろしいほどの才をもっている!私など、足元にも及ばない!」
と、叫んでいた。
どうじゃ?お主に、うってつけの人材じゃろう?と、司馬徽は、目を細めた。
確かに。
自らを前に出すことなく、友とやらを、推挙するとは、この、徐庶という男、かなりの器の持ち主だ。
知力は、いくらあっても、無駄にはならない。師匠が、才を認める男、徐庶を側に置いても問題はないだろう。
「……仕官を希望していると、聞いたが、どうだろう、私の力
になってもらえまいか?」
劉備の言葉に徐庶は、二つ返事で承諾するが、あー、と、何やら口ごもった。
「条件があるのだな?構わないい、言ってみなさい」
「では、友の、諸葛亮に、お会いください。あやつこそ、伏竜鳳雛、ついでに、名士とも、繋がりがございます。才、あり、財への繋がりあり、なのですが……」
ん?と、劉備は、首を傾げる。
会えと言いつつ、何を渋っているのだろう。
「あーー、今は無理だわ!絶対に!あー、先生、その事で、どうすれば良いのか、お知恵を拝借に来たのです!」
と、なにやら、深刻な流れになっている。
訳がわからぬ劉備は、
「まあ、とにかく、その者に会わぬ事には……、そうだ、共に、登城してもらえぬか?」
と、言った。
「あーー!ますます、無理です!とにかく、今は、無理なんです。いや、その無理はいつまで、続くやら。私の手には、終えませぬ!どうぞ、劉備様が、お運びください。そして、事をお確かめください!」
ははは!と、困りきる弟子の姿に、司馬徽は、腹を抱えて笑っている。
そういえば、棗が、どうのと、揉めていたが、孔明は、劉備に対して、さらなることを、やらかしたのだと理解した司馬徽は、
「どうじゃ?劉備殿、足を運ぶのも一興ぞ?」
何か、隠しているような、妙な空気が引っかかったが、劉備は、では、と、返事をした。
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