8、蜜月

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涙を堪え、ベッドサイドのテーブルにあったメモ用紙に添えられているボールペンを手に取り、心を落ち着けるために大きく深呼吸する。 そしてそのテーブルの上で震える手を何とか落ち着けながら1字1字丁寧に記入していく。 「……あ、渓くん、私印鑑が……」 途中まで記入したところで印鑑を持ち合わせていないことに気づき、手が止まる。 「……ほら。仏壇の引き出しから、翠の印鑑拝借してきた」 「……ありがとうございます」 差し出された印鑑を見てあまりに用意周到な渓くんに私がくすくすと笑えば、彼はバツの悪そうな表情を浮かべた。 そして再び続きを記入し、最後の捺印まで済ませたところで渓くんが私をぎゅっと抱き寄せ、 「ーーお前を一生幸せにする」 誓いの言葉を直接私の耳に注ぎ込む。 それから身体を離した渓くんは、熱く甘い視線で私を絡め取り、ちゅ、と私の唇を啄んだ。 「ふふ、まるで誓いのキスみたい……」 「ったく、お前は言うことがいちいち可愛いな……」 真っ赤に火照った顔でそう言えば、渓くんが苦しげに顔を歪め、さらに性急なキスが降ってくる。
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