1/13
前へ
/67ページ
次へ

 6月。  初夏を迎えようとした日、その女の子は久し振りに登校した。普通そうに見えたが、そうではなかった。確か、ユウからのLINEにそう書かれていたな……。 『もし"あいつ"が命を取り留めたら、"あいつ"の事、よろしく頼んだ』  一体何を考えているんだよ……。その女の子の名は最上 奈子なのは分かっている。恐らく退院したばかりなので、最初は話しづらいだろう。 「なーに、珍しそうな顔で見てるのですか?」  いきなり声を掛けたのは加藤 圭一(かとう けいいち)、通称けーちゃん。  俺の小学校時代からの友人で、ユウ共仲が良い。 「いや、なんもだ(なんでもない)…」 「最上、1ヶ月振りだと聞いたから大丈夫だべか?」 「さぁ…」  俺とけーちゃんは北海道弁交じりで最上を心配する。  けど、そんな彼女に声を掛ける勇気はこれぽっちもなかった。何せ、ユウとしょっちゅう会っていたから…。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加