悪夢は現実か。

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柳生には、2つの顔がある。 1つは、誰もが認める優等生の顔。 成績優秀、試験があれば学年トップ3には必ず柳生。 運動も美術も音楽も、彼の右に出る者はいない、いわゆる品行方正な彼は学校中から慕われる存在だ。 才能をひけらかすこともせず、かといって傲ることもないそんな彼に、もう1つの顔があるなんて学校中の生徒も、もちろん教師だって知る由はないと言い切れてしまうほど、柳生の身のこなしは完璧である。 優等生な柳生のもう1つの顔、それは誰もが知ることのないクソビッチ野郎だ。 漆黒のストレートに輝く黒い髪をワックスで後ろに固め、今時では珍しくもないメイクをその端正な顔を施して黒縁の眼鏡を外す。 そして、高校生とは思えないような洋服に身を包めばもう1つの彼が出来上がる。 その見事なまでの変装を施して、一晩だけの関係をイケメンとだけの間に交わす。 それが、彼の2つ目の顔を持つ目的である。 趣味と言ったらかなり心象は悪いけれども、やけくそで始めたそれが意外にも柳生のやさぐれた気持ちにぴったりとはまってしまってからは、いつの間にかそうすることが当たり前になっていた。 バレることもない、誰かを好きになることもない、裏切られることもない。 ただ、柳生の心の奥に燻る欲を満たすだけ。 だから、柳生はすっかり油断していた。 まさか、どこの誰かも知らないイケメンと腕を絡ませてホテルに入ろうとしている柳生を、クラスメイトが見抜いたことも。 そして、その姿を見抜いたのは、学校一恐れられている名高いヤンキーのクラスメイト佐久良であることも。 佐久良が、可愛らしい猫を優しく抱き上げて目を丸くさせていたことも。
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