噂のヤンキーくんとは。

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防音が効きすぎているこの部屋では、音楽も喧騒もないこの時間がとてつもなく長く感じられる。 それが例え3分だとしても、体感的には恐らく30分とか、それは恐ろしく何倍もの速さで正反対な2人の間を駆け抜けていく。 呼び出したのは先生という、自分でもやや無理矢理すぎた言い訳のせいで、柳生は佐久良に話すタイミングを失ってしまっていた。 というのも、佐久良は校内一恐れられているヤンキーなのだ。 そのヤンキーが呼び出されでもすれば、殴るか蹴るか、または脅してゆするかとか、それが普通であるし、誰しもが思いつくところであると思う。 それがまさか、椅子に座ったり立ったりしてウロウロとまるで熊のように、ソワソワして柳生の方をチラチラと見ているのだ。 「あ、あのさ。先生、いないけど?本当に呼んでたのか?」 無言の部屋に取り残された優等生とヤンキー、2人だけの空気に我慢しきれなくなった佐久良がついに口を開いた。 途端に、柳生の思考は混乱する。 先生いないけどって聞こえた気もするし、どことなく言いにくそうにしていた気もする。 だけど、そんなのはヤンキーのセリフではないはずだ。 それとも、昨日の話しを蒸し返したくなくて、とぼけたフリをしている狡猾なヤンキーということだろうか。 校内一恐れられている佐久良のことだ、きっと「おい、お前って、誰とでもヤッてんのか?」とか、「優等生のフリして、裏ではただのビッチか。あいつらが知ったら、どんな顔するのか、見ものだよな。」とか言われる想定をしていたのに。 それか、「俺にも一発くらい、ヤらせろよ。口止め料。」って、脅しでもしてくるかと思っていた柳生は、あからさまに戸惑っていた。 だって、金髪で目付きも最高に悪くて、柳生の倍くらいには肩幅もあって、おまけに耳にもじゃらじゃらと音が聞こえてきそうなくらい、ピアスをつけてるヤンキーが目の前にいるんだぞ。 「ああ〜柳生、だよな?俺、なんか変なこと言った?」 言葉を失っていた、というより、佐久良の本心を見抜いてやろうと腹を探っていた柳生に、更に追い討ちをかけるように佐久良はまた、想定外の言葉を言い始める。
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