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「俺、見た目がこんなんだから、普通に喋ってるつもりでもみんなから引かれてるみたいなんだよなあ。なんか、的外れなこと言ってたら教えてくれ。」
見た目?的外れ?教えてくれ?
佐久良の言葉全てが、まるで同じ日本語だとは思えない。
何回も言うが、目の前にいるのはヤンキーなのだ。
目が合えば「なに、見てんだよ?はあ?」って喧嘩吹っかけてくるはずのヤンキーが、気まずそうにこちらをちらちら伺いながら、柳生に向かって頭まで下げているのだから、優等生だと自他共に認める柳生の脳みそがフリーズするのも仕方のないことである。
「あのさ、佐久良くん。君は本当に先生が呼んでるから、俺についてきたのかな?」
「え?違うの?ってか、柳生がそう言ったじゃん?」
働くことを放棄した脳みそを、どうにか働かせたというのに、佐久良の突拍子すぎる返答にまた、柳生の脳みそが緊急停止ボタンを押そうとしている。
「ん〜そうじゃなかったら、柳生が俺に用があるってことだよな?
あ、もしかして、昨日のことか?」
頭の上に"!"マークが飛び出して、閃きましたと吹き出しが見えたのは、気のせいではないはずだ。
佐久良は妙に納得したような表情で柳生を見て、ベラベラと捲し立てるかのように話し始めたのだ。
「ああ〜あれか。まあ、あれだよな。人それぞれ、いろんな顔があるっていうかさ。別に俺は、柳生が学校の外でああいうとこに行ってるからって、なんだって言うわけじゃねーし。
あれだ、俺が言いふらすとか思ってるんなら、その心配はしなくていいぞ。」
柳生が喋る隙を与えずに、聞いてもいないことをベラベラと喋る佐久良は、終いには自己完結さえしている。
そんな佐久良を見ているうちに、柳生はこの妙な違和感の正体に辿り着いてしまった。
こいつ、もしかしなくても、見た目ヤンキーのくせにヤンキーになりきれていない、最近では絶滅危惧種認定されている、天然って奴なのだろうか、と。
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