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そうと分かれば、フリーズしていた柳生の脳みそもようやく、通常運転に切り替えようと、鈍い音を立てながらギシギシと動き始める。
そうだ、なんせこいつは絶滅危惧種認定された、天然ヤンキー佐久良なのだ、と。
「あのさ、ちょっとストップ。俺、まだなんも言ってないから。」
「あ、ごめん。俺、また先走って勝手に喋りまくってたよな。つい、いつもの悪い癖が出てた。」
この多目的室に入ってから、柳生が発した言葉は2回目だということに、柳生自身が一番驚いていた。
いつもだったら、相手がもう辞めてくれ、わかったから、と嫌になるくらいに理詰めで捲し立てるというのに、今日は形成逆転しているこの状況が腑に落ちないからだ。
正直なところ、悔しい。
柳生は、ワンワン吠えていたデカい犬のようなヤンキー佐久良が黙ったこの隙に、どうにかして打ち負かしてやりたい気持ちでいっぱいだった。
「まず、昨日のこと。佐久良くんが見た通りのことを俺はしてるし、昨日が初めてでもない。それは事実だよ。」
「お、おう。」
「でもさ、佐久良くんだって、あんなの日常茶飯事だろう?俺とは違って、君は引くて数多だろうし、女の子も、もしかしたら男とだって、俺とは比べ物にならないほど経験あるんだろうし。
優等生で通ってる俺があんなことって、意外だったかもしれないけど、男子高校生なんてそんなもんだよね。
だから、珍しいことでも、ましてや驚くようなことでもないよね。」
「え?ちょ、ちょっと待てよ。なんの話ししてるか、全然わかんないんですけど。」
「は?」
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