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2人だけのフェアな秘密。
柳生の脳みそがまた、緊急停止ボタンを押そうとしている。
佐久良の言葉が理解できない。
いや、理解はできるが理解したくはないというが正しいのだと思う。
佐久良の言葉を理解するということはすなわち、佐久良に対する俺の見立てが間違えているということになる。
俺の見立てが間違うはずがない、いくら天然ヤンキーだとしてもまさかそういう経験がないなんてあり得るのかと、柳生の脳みそが警鐘を鳴らし始めている。
「柳生?大丈夫か?」
想定外の事態に思わず黙りこくってしまった柳生は、佐久良の心配そうな声色が聞こえて我に返る。
「あ、ああ。なんでもない、大丈夫だよ。」
想定外ということは、佐久良のことを偏見の目で見ていたということ。
俺としたことがいくら裏の顔を見られたからといって、焦り過ぎていた。
ヤンキーでありながら天然である佐久良をもう一度観察して、分析する必要がある。
柳生は気を取り直すように、佐久良には気付かれないように小さく息を吐いてから反撃を始めた。
「そういえば俺たち、面と向かって話すのは初めてだよね。
ここだけの話し、佐久良くんは特定の人っているの?俺の秘密も知られちゃったことだし、教えてよ。それでお互い様になるよね?」
親しくなりたがるフリをしながら、さり気なく脅す。
隙を見せながら、相手が油断した隙につけ入る。
そうすれば頑なに守っていた鉄壁の兵士だって、1人くらいは揺らぐ奴がいる者だ。
もし、この作戦で揺るがないとするならばそいつはよっぽどの切れ者かあるいは、よっぽどの天然か。
「まあ、それもそうだよな。俺だけ言わないなんてフェアじゃねーし。」
「佐久良くんが理解ある人で本当に良かったよ。それで?どうなの?」
「誰にも言うなよ?俺…実はまだなんだ。その、付き合うとかそういうこと。」
「は?」
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