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佐久良が話す言葉はまるで独白のようだ。
「俺が話しかけるとみんなびびって離れるからさ、こんなナリしてる俺が悪いんだけどな?
俺としてはもっとみんなとフレンドリーになって、可愛い女子と仲良くなってメールとかしたりして好きになってデートしてとかしたいわけよ!」
そっか、佐久良って女子と仲良くなってデートしたいんだ、ってそんなこと急に言われて飲み込めるわけがないだろう!
思わず脳内で突っ込んでしまう柳生に気付く素振りもないままに、佐久良は顔をほんのりと赤らめてまだ夢物語を語り続けている。
「手繋いで帰るとかもいいよなあ。いちいちドキドキするんだろ?ああいうの。
でも柳生は俺よりも詳しいか、あんな歳上の彼氏?がいるんだからな。」
「は?彼氏?なんのこと…。」
「え、だってこの前、腕組んでホテルに入ろうとしてたじゃねーか。歳上の彼氏に合わせて柳生も随分大人っぽい格好してたよな?」
柳生の脳みそが警鐘を鳴らす。
脳内では赤い帽子を被っている奴が(帽子の色が奴だけ違うからきっと司令塔だろう)が、白い帽子を被っている奴らに『早くするんだ!たったの3分前のこてだろ?巻き戻せ!』と偉そうに叫んでいる。
…ような姿が見える気がするなんて、ついに俺はおかしくなってしまったのだろうか。
そもそも、柳生の脳みそはいつでも一定のリズムと速度を刻んでいる。
動揺も焦りも混乱も、あらゆるシチュエーションさえ想定できていればそんな感情に振り回されるなんてことは存在しないはず、なのに。
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