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………頭が痛くなる。プロフィールを見る限り姫宮が何かしらやらかすのは目に見えていた。入学式の日を勘違いってどういうことだ?
現在の業務に加えて新入生の対応……蓮も暇じゃない、風紀は歓迎会の見回り準備に時間を追われてるはずだ。恐らく、柊が先に気づいて蓮に伝え、それが生徒会に伝わらないよう気を使ってくれたんだろう。
(姫宮家…今はもう落ちぶれてしまった。この際ここで終わらせるか……)
いやいけない、と悪い方向に向かっていく自分の頭をなけなしの理性で止める。
どうしたら、と考えていると急に身体が傾く。
「…ょう!」
あ、だめだ。と思った時にはもう遅い。千の焦った顔を最後に、おれは逆らうこと無く目を閉じた。
千 side
ガタン!と音がして会長の身体が倒れていく。
「かいちょう!」
そう呼ぶも反応はない。慌てて駆け寄ると目の下の隈がはっきりみてとれた。
どうしよう、おれが気づかなかったから。蓮くんに言っちゃだめって言われてたのに言っちゃったから。
泣きそうになる自分を今いちばん大変なのは会長だ、と押しとどめ、考える。
「邪魔するぞー。暁、終わったか?」
とりあえず保健室に運ぼう、という結論に至って自分より大きい会長を抱き起こそうとしたその時、生徒会室に入ってきた有馬先生。
「…!ありませんせい!かいちょうをたすけて!」
ちょうど机の陰になっていて見えなかったであろうおれたちの所に先生がどうした?!と駆け寄ってくる。
「かいちょう、新入生で、姫宮が、大変で、たおれちゃった、おれのせいで、、、、」
こう言いたいんじゃないのに!はっきり喋れない自分に腹が立つ
「わかった、とりあえずお前じゃこいつを連れてくの厳しいだろ。保健室でいいか?俺が連れてく。」
「うん、でもせんせい、怪我してる」
左手、多分昨日のだよね?と言うと、少し顔を曇らせる先生。
「あー、まあ大丈夫だろ。悪化したら暁に責任とってもらうからよ。そっちの方が得だろ?」
そう言ってニヤッと笑いながら会長をお姫様抱っこする先生。先生はこの学校でもかなり大きい方だ。会長が182cmなのに対して、先生は186cm、数センチの差でお姫様抱っこするのはしんどいはずだが、余裕の表情を浮かべていた。
「せんせい、ありがとう」
「構わん。だが兎妃、昨日のことは絶対にコイツに言うなよ。」
「春夏と戦ったこと?」
「ああ、そうだ。…てか、昨日の天春戦に俺が参加した事は久遠と柊しか知らないはずなのになぜお前が知ってる?」
少し空気がピリッてした。
「おれは、生徒会では情報でしかたたかえない。その分野で、他の人に、遅れをとることはない。生徒会の、名誉に誓って。かいちょうは、こんなおれでも、大切にしてくれる。だからがんばる。かいちょうの不利になることはしない」
そう言って目の前に立つ有馬先生に頭を下げる
「せんせい、かいちょうをたすけて」
「…わかった。こいつのことは任せておけ。お前の意思は受け取った。こいつの仕事の引き継ぎだけ他の役員と分担してやってくれ。しばらく休ませないと死ぬぞ。」
そう言って生徒会室を出ていくのを見送る。
先生はすごい。おれじゃ何も出来なかった。おれにはできることが少ない。このままじゃずっと悔しいままで終わっちゃう。
「頼りきりじゃなくて、おれも自立しなきゃ」
新たにそう決意し、会長のパソコンを見て驚く。
3人、いや、4人分。会長が1人でこなしている仕事量だ。ろくに眠らず、食事もせず、たった1人で生徒会の仕事が円滑に回るよう努力してきたのだ。
(会長、おれたちをもっと頼って。頼りないかもしれないけど、誰よりも会長が大好きな生徒会を。)
みんなの前ではちょっとかっこつけな会長も、生徒会室にいる少し抜けてる会長も、どっちも大好きだ。
(に、しても…あまりにも量が多い…かいちょうが生徒会に携わるようになってからかな…?嫌な雰囲気だな………)
生徒会の頭脳、奏に相談しよう。
このままじゃ、会長だけが大変だから。
☆天春戦…天樂と春夏が全勢力でぶつかりあった戦い。天樂の鬼気迫る迫力で春夏を圧倒し、一夜にして春夏は壊滅状態に追い込まれた。
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