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バタン、と扉が閉まる音がすると同時に今出たばかりの保健室に今すぐ戻りたい衝動に駆られる。
あ゛ーー…超可愛かったなァ、あいつ。
小さい頃からずっと一緒であいつからすれば俺はただの幼馴染だろうが、俺はあいつの色をこの目に映した時から本能が運命だと騒いで仕方がなかった。誰にやるかと、ひと目見ただけの相手に思うのは普通でないことをその時は知らなかった。
「…オイ、居んだろ?朱羽」
潜んでいるつもりだろうが、人の気配に過敏な俺にはその無駄な抵抗が腹立たしい。
「気づかれてましたか…」
そばの角からゆらり、と身を現す朱羽。
こいつのことはずっと気に食わない。可愛くて仕方のない俺の暁を変えたのはこいつだ。容姿や家柄に釣られてやってきたヤツらは俺がちょっと愛想を振りまけば俺のほうに転がってきてくれるがあの天性のカリスマをモロに食らったやつらはそうはいかない。あいつの"オレサマ"は後付け人工のくせに天性の俺が敵わない。
──────もっとも、天然でこういうことをやらかしてくれるから堪らなく可愛く、逃したくないのだ。嫉妬も羨望も一欠も無い。
「いい加減に鬱陶しい。ゴミに集る蝿のようだ。何かあれば羽音を立てて飛び回る。それが不快でたまらない。あと一年耐えられるかわからないほどに。慎め」
久遠家と朱羽家だと久遠家に軍杯が上がる。この学園では家柄がかなり重要視されるので家柄が良ければ良いほど権力が集まる。久遠は多少の傷を負うが朱羽を追い出すことは理論上可能である。
つまり、遠回しに余計な事をするならばこちらは手段を選ばないと伝えているわけだ。
「ふふ、そんな顔しないでください、委員長?私は貴方の行く道を阻むほど馬鹿じゃない」
そう言って笑みを浮かべる目の前のやつ。この場面で笑みを浮かべられるやつがただの生徒だと誰が思う。こういうところが腹立たしいと言うのに。
「ああ、別に怒らせるつもりは無いんです。一度会長に無愛想すぎると指摘を受けたことがありまして。常に笑うように心がけているだけで、ばかにしているつもりはこれっぽっちもありません」
あ゛ーーー。なんでこんなやつが副会長なんだ?何故誰もこの気持ち悪い笑顔を止めさせない?会長に指摘されたからってのは意識的なマウントだろ。
「いいや、そんなまさか。失礼ですが風紀委員長、もしかして会長のこと好きなんですか?」
…こいつ、心が読めるのか?って、なんでバレてんだ?いや、今更好きだけでこの気持ちを表そうとは思わないが準ずる気持ちはある。
「考えている事が口から出るのはふわふわ天然受け主人公の場合のみ許されることであって長身ワイルド系ヤンデレ攻めがやっていい事では無いということはとりあえず置いておいて。心の声が口から出てますよ?」
????何言ってんだ
「……何言ってんだ?それより、俺が暁の事を好きかどうかだって?笑わせる。そんな簡単な言葉じゃ言い表せないほど俺は暁を想ってる。お前なんかに邪魔はさせねぇ」
俺の中で朱羽が食えないやつからわけわかんねぇやつに変更された。
「そうですね!ありがとうございます!最初から私は貴方の邪魔をしようだなんて思っていませんよ!今後とも会長をどうぞよろしくお願いします」
そう言ってお辞儀を作る朱羽を無視し、踵を返す。さっさと仕事に戻らねぇと。
「ヤンデレは対象以外どうでもいいという事が立証されたついでに対象以外にはちょっと残念なことも!!嬉しい!」とかなんとか意味不明な事を言っているやつはこれ以上相手をする価値がないだろう。
久遠side
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公開予約するの忘れてましたすみません!
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