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No side
眉目秀麗 博学才穎 金声玉振 才気煥発……
どれもこの人を表すのに相応しい。
────国立 凰堂学園
国一番の偏差値を誇る、所謂進学校。
幼等部から高等部までエスカレーター式の超マンモス校である。山中の閉鎖的な場所にある為、学生たちの性指向はほとんど同性に向いているとかいないとか……。
通っている学生のほとんどがどこかの企業の子息で、よくある表現をすると"お坊ちゃま学校"。
そんな学校の唯一絶対神のような存在…
生徒会会長だ。古くからの伝統ある立場。
今年その座に君臨したのはこれまた国一番の財力を誇る神宮グループの長男、神宮 暁であった。
冒頭の四字熟語は全てこの人の為にあるような言葉だ。第34代目にして凰堂学園最高の会長だと讃えられている。
「式の最後に生徒会会長からの挨拶を頂きます。」
キャーーー!と上がる歓声。男子校だと思えない程の黄色い声である。
「会長ーーー!!!!」
「抱いてください!!!!!!」
「抱かせろーーーーーー!!!」
「静まれ。俺の時間を無駄にするなよ?」
瞬間、静まる会場。一言たりとも聞き逃さないという闘気すら感じられる。
─────堂々とした佇まい、溢れ出るオーラ。才能がここだと叫んでいる。
「いい子だ。…さて、ここに居る者は既に知っているだろう?俺は神宮 暁と言う。ようこそ、凰堂学園へ。俺の代に在学出来ることを光栄に思え。後世に誇れ。身体中が歓喜しているだろう?今日はこの声を、この姿を、俺という存在を目に焼き付けて帰れ。以上だ。」
「痛い発言だ。」そう思うか?
「ガキの戯言だ。」そう思うか?
この言葉を直に聞いた者たちはそうは思わない。
「我らが王だ。」
本能がそう感じているのだ。
暁 side
「──────後世に誇れ。身体中が歓喜しているだろう?今日はこの声を、この姿を、俺という存在を目に焼き付けて帰れ。以上だ。」
恥ずすぎんだよな、このセリフ。
歯が浮くどころか内臓が浮くぞ、体調不良者は居ないか?大丈夫だな?よかった。
奏が考えてくれるのは良いが、こんなセリフ俺が言っていいものなのだろうか?
…考えても仕方がないな。はやく生徒会室に戻ろう、健康被害が出るといけない。
本校舎と体育館を繋ぐ通路はふたつある。ひとつは一般の学生が使用する表出入口。
もうひとつは役職持ち(俺のような生徒会役員の他には風紀委員などがこれに該当する)が利用する裏口だ。
俺たち役職持ちは外に出るだけで何故か取り囲まれる。色紙を持っていたり、ペンを持っていたり、なにか叫んでいたり…人によって様々だが。
奏たちが囲まれているのは恐らく生徒たちから好かれているからだろう。
一目でも見ようと集まって来るからだろうが俺の場合は訳が違う。他のどの役職持ちよりも押し寄せてくる人が多いのだ。
…嫌われているのだろうか?沢山叫ばれるので何も聞き取れないんだ。
「はー、憂鬱だ。あの挨拶でまた俺の事を嫌いな人が増えただろう。奏は俺を貶めたいんだ…」
呟きながら生徒会室へと消える背中。
この生徒会長、逆の意味で恐ろしい勘違い野郎であった。
ほぼ全ての生徒からの好意の自覚、ナシ。
生徒会長として讃えられている自覚、ナシ。
教師から厚い信頼を向けられている自覚、ナシ。
トリプルナシの超オタンコナス野郎であった。
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