自覚はあるのか

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「遅いですよ、会長。」 がちゃん、と扉が閉まると同時に声をかけてくるこの男。 朱羽(あかばね) (かなで)、生徒会副会長だ。眼鏡をかけており、その目には知性が宿っている。美しい黒の艶髪が赤みがかった瞳を際立たせており、誰がどう見ても美しい男性だ。 (どう考えても奏が生徒会長(いちい)なはず) 「…ょう……会長?」 「あぁ、すまない。なんだ?」 いけない、考え事をしていては。 「今日の入学式の挨拶も完璧でしたよ。式が終わってすぐですが新入生歓迎会の計画を立てねばなりません。」 「そうだったな、例年は鬼ごっこだが…なにか案はあるか?」 自然と集まってきた生徒会役員達と共に流れるように議論に移動する。 「別にそのままでもいいんじゃない〜?」 会計、紫雲(しうん) (ひかる) 一人で夜を過ごすことは無いと噂されている。茶色いふわふわの髪と丸い目が可愛いと親衛隊が言っていたのを聞いた。 「僕達も〜」「鬼ごっこで」「「構わないよ〜!」」 庶務、有栖川(ありすがわ) 空翔(あきと)海翔(かいと) そっくり過ぎる双子なので見分けがつきにくい。だが、別々に行動している時はそれぞれの個性が光る発言をする。涙ボクロがチャームポイントだとか? 「おれも、それでいいとおもう」 書記、兎妃(とき) 千斗(せんと) たどたどしい言葉だが、自分の意見ははっきり伝える。データ管理などのコンピュータ関連が得意で、生徒会の要だ。179cmと大きめなのに可愛らしい顔と雰囲気なのがギャップ…らしい。 「では今年も鬼ごっこで行きますか」 奏がまとめるように言う。だがしかし… 「待て。それだと代わり映えしない。折角なら新しい要素を取り入れてみないか?」 毎年おなじ事をしても面白くないからな。 「そうだな、例えば捕まっても味方に助けに来て貰うことが出来ればもう一度逃げられる…とか。」 (なんだったか、警察……ケイドロだったか?) 「少し前の他校交流会におれだけ行った時があっただろう。その時に教えてもらったんだ。ケイドロ、という警察という鬼役と泥棒という逃げ役で行う遊びを」 そいつの名は…フ、フダンシ?だったか。男子校では絶対にこれをやらなくてはならないとそいつの聖書に書いてあったらしい。俺は聖書には詳しくないので博識だなと感心してしまった。 「なるほど。確かに序盤で捕まってしまうと待機時間が退屈ですもんね。おもしろそうです」 「オレもケイドロ?!してみた〜い!そっちの方が楽しそうだし〜、かわい子ちゃんともいっぱい話せるってことだよね〜☆」 「「僕達もケイドロしてみたーい!」」 「おれ警察なる」 みんなの反応に顔がほころぶのが自分でもわかる。やはり自分の意見に同意してもらえるというのは嬉しいものだ。 「今年はケイドロに決定だな。企画書をまとめる。輝、予算案を早急に作成してくれ。奏は全校生徒にケイドロの認知度や歓迎会への意見などのアンケート調査、(あき)(かい)は奏を手伝ってやってくれ。(せん)は鬼役と逃げ役の抽選システムを作成してくれるか?よろしく頼む。では各自、楽しい歓迎会にする為に尽力しよう。解散」 解散の一言で全員が自分のやるべきことに取り掛かる。本当に優秀な役員たちだ。 おれが会長だと言うのは疑問に思う点だろうが、こんなおれに投票してくれている生徒たちには感謝したい。最高の仲間たちと最高の学園生活を過ごさせてもらっているのだから。 「さて、おれは風紀に見回りの手配をお願いしてくるとするか。ちょっと出るぞ」 風紀委員会と生徒会は権力が拮抗していて恥ずかしい話、あまり仲が良くない。 特に委員長と副委員長のクセが強くて出来ることなら生徒会で終わらせたいがそうはいかない…というのが生徒会としての意見だが、おれは知り合いがいるのでそうでも無い。 歓迎会という名の親睦会では純粋に楽しむ者の他に邪な考えを持つ者が現れる。 そういうやつらに対応する為に風紀委員会の協力は必要不可欠なのだ。 「できることなら代わってあげたいのですが…委員長があれだと私も流石に…気をつけてください」 奏がパソコンから顔を上げてそう声をかけてくる。 「ありがとう、サッと終わらせてくる」 「わぁ〜!会長様だ〜!!!」 「ウソ?!神宮様が居らっしゃるの?!!」 「美しい…!一度でいいから抱かれたい……」 う、囲まれた。風紀委員室に行っても委員長が見当たらなかったので探しに来たのだが。見渡す限り人だ。進めない……!そうだ、奏が言っていた。囲まれてどうしようもない時はこう言え、と。なんだったか… 「お前ら、俺が進めないだろう。道を開けろ。」 ─────腹に響く深い低音。俺が言おうとしたセリフが息を吐くのと同時に出てくるこの男。 道を開けろ、と言った瞬間にモーゼの如く道が拓ける。 「よぉ、暁?俺の事探してたんだってな。」 風紀委員長、久遠(くおん) (れん) 身長183cmの長身、この学園で俺と目線が同じ数少ない人物のうちの一人だ。紫の瞳に青みがかったウルフカット、どこかの族の総長をしているとかいないとか…。正真正銘、本物の"オレサマ"だ。 「別にお前のことを探していた訳では無いが、話がある。ちょっと来い」 俺も俺様会長?として名を馳せなければならない、とフダンシが言っていたから奏に相談したらこうやるんだと教えてくれた。できてるか? 「随分な物言いじゃねぇか。着いてってやるよ」 なんだ、相変わらず優しいなぁ 「お前のところでいい。連れて行け」 じゃないと囲まれるし。また進めなくなるし 「ハッ、命令形か?連れてってくださいの間違いだろ。まあいい、着いてこいよ」 う〜ん、いや、こいつガチでかっこいいな そう言って小さくなる背中を見送る。 「…何見てんだよ、はやく来い」 ああ、そうだった
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