自覚はあるのか

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「で、話ってなんだよ?俺に抱かれる気になったか?」 風紀委員室に入った瞬間、壁に追いやられる。 「違う、歓迎会のことだ。一旦離れてくれないか?」 さすがにこの体制でずっと居るのは勘違いされるし、こちらとしてもいい気はしないぞ。 「なんだよ、どうせ見回りのことだろ?もう手配済みだ。何をするにしても見回りがいるのに変わりはねェ。これで用事は終わったな?俺と気持ちイイコト、しようぜ?」 近い、さらに迫ってくる。近い、まじで。 「それ以上近寄るな。足が出るぞ?」 そう言って睨みつけるとスっと離れる身体。 「つれねーの。」 やっと解放された。でかい男同士であんなことしてても誰一人嬉しくないんだよな。 「俺は嬉しいぜ?ちょっと休んでけよ。どうせ休みなしでやってんだろ、おまえ。」 ズバリ、見抜かれた。何も言えないでいると蓮がココアを入れてくれた 「鳩が豆鉄砲食ったような顔してどうした?おまえ、まだどうせコーヒー飲めねぇんだろ。」 こんなこと蓮しか知らない。さすが幼馴染だ。 「ああ、あれは黒くて苦い水だな。」 「まだまだだな、おまえ。よくそんなんでいつも俺らの前に立ってるな?」 「おれもそう思う。あんな感じじゃみんながおれを取り囲むのも仕方がない。でも奏が…」 そう言いかけると蓮の眉間に皺が寄る。 「奏、奏って…朱羽大好きだな、暁。」 普段の低い声からさらに低くなった声。 「蓮?怒ってるのか?」 「あァ、怒ってるよ。人の気も知らねぇで、ポンコツの勘違い、懐きぐせのある俺様のフリしてるやつにな。」 「…もしかしなくてもおれか?」 恐る恐る聞いてみると不機嫌なオーラがもう一段階深まったような気がする。やばい、地雷? 「おまえ、どうせ勘違いしてんだろ。生徒に嫌われてるとか、奏が生徒会長だったりいいのにとか。」 …びっくりした。ついさっき考えてたことだ。 まさか蓮、心が読めるようになったのか? 「心が読めるようになったわけじゃねぇからな?おまえの行動はありえないほど自信に満ち溢れてる。堂々としていて、不安という文字すら知らないんじゃないかってほどにな。だが俺にはわかる。何年一緒にいると思ってる?」 そう言ってニヤリと笑う蓮に隙はない。 …あまりにもかっこいいじゃないか。 「さすがの俺でも惚れるぞ?…今度久しぶりにご飯でも食べに行こう。ありがとな」 遠回しに慰めてくれたんだと察して、お礼を言ってにっこりと笑う。 「惚れとけ、誰よりも幸せにしてやるよ」 飯は俺の都合があいた時に誘いに行くわ、と付け足す蓮にさっきの怖いオーラはない。 「蓮と付き合えるやつは誰でも幸せだろ、あと…そうだな、おまえに抱かれる気は無いが、気が向いたら抱いてやらんこともないぞ?」 そう冗談を言って、風紀委員室を出た。
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