297人が本棚に入れています
本棚に追加
暁 side
「かいちょ〜!!たすけて終わんないよ〜!!」
歓迎会2週間前、生徒会は激務におわれていた。
「どこが終わってないんだ?」
「なんかね〜、この前通った予算案はそのままなんだけど〜、ケイドロするのに使う腕輪を手配するのに手間取っちゃって!!どういう仕組みにすればいいかとか色とか〜?!ダサいのとかは有り得ないから〜、もうどうしたらいいかわかんないよ〜!!」
うえーん、と泣き真似をしながら頼ってくる輝。
正直こっちも奏とアンケートの整理に手一杯で手伝うのは難しい。が、頼ってくれる仲間を放っておく訳にも行かない。
(…ちょっとだけ無理するか)
「わかった。じゃあ腕輪に関する事は俺が引き受けよう。パソコンにデータを転送しておいてくれ。その分、輝は千の事を手伝ってやってくれないか?」
システムは完成したが役職持ちをどうわけるかを悩んでくれているようでな、と付け足すと
「わかった〜!!ありがとうかいちょ〜!!」
と笑って去っていく。俺が頑張る事で他が笑顔でいてくれるならそれでいい。
「会長、本当に大丈夫なんですか?私も少し余裕が出来た…訳じゃないですが、空翔と海翔も居ますし、会長1人に任せる訳にもいかないですし手伝いますよ。」
「いや、奏たちはそのまま自分の事をやってくれればいい。大丈夫だよ、心配ありがとな」
奏たちにはアンケートに関することですごく頼りにさせてもらっているからな。これ以上負担を増やしてはいけない。
生徒会室に無言が訪れる。
みんなの投票でおれ達は選ばれているから、投票してくれてありがとうの気持ちを込めて最高の歓迎会を行う。
「会長、お先に失礼します。くれぐれもご無理なさらないで下さいね。」
…声をかけられるまで気が付かなかった。もうこんな時間か。
既に下校時間は過ぎていた。生徒会は授業免除の権利があるのであまり教室には寄らないが恐らく校舎はもうガラガラだろう。
「ああ、おつかれ。大丈夫だ、奏も無理するなよ」
そう言って見送る。
間に合うか間に合わないかの次元ではなかった。間に合わせなければならないのだ。
そんな気持ちで一心不乱に仕事をこなしていく。
「さて、もうひと踏ん張りだ」
一人になった生徒会室でそう呟く。
かたかた、とタイピング音だけが響く。春にも関わらず外は暗い。
(もう22時か…朝から何も食べてないしそろそろ何か食べないとな)
昼頃には感じていた空腹は今はもう感じられない。
備え付けの冷蔵庫を見てみると、口で吸いながら飲むタイプのゼリーが入っていた。
「これでいいか。手軽に済むし。」
栄養を得る為だけの食事が終了し、再び作業を開始する。結局自室に戻ったのは既に日が変わった後だった。
自室に戻った瞬間、どっと身体が重くなる。
「ん、もう1時か…日が変わってしまったな。だが明日は7時には生徒会室に居たいから6時には起きないと。」
アラームをセットし床に入る。
役職持ちはまるでホテルのような、住むには十分すぎる設備が整った部屋を用意される。
普段は広すぎる部屋に毎日一人で若干寂しく感じるが、最近はお風呂と寝ることだけの為に帰ってくるだけの場所なので寂しさを感じる暇すらない。
「…はやくねよう。」
目を閉じるだけで直ぐに睡眠に入る。
暁自身は自分がどれほど疲れているのかを全く理解していなかった。
最初のコメントを投稿しよう!