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 大地は同じクラスで、出席番号がひとつ前だった。入学式のあと、クラスごとの説明会があった。担任の教員――初日の説明会を最後に会うことはなかった――が授業の履修について話し終えると、つんつんと立たせた栗色の髪が振り返ったのだ。 「ねえねえ、友達いる?」  些か失礼な質問にも思えるが、おそらくこいつは入学前にSNSで友人をつくったかどうかを訊きたいのだろう。 「いない。」  SNSで知り合うのも結構なことだが、俺は結局直接会ってみないと親しくできないだろうと踏んで、特に何の活動もしていなかった。 「よかった!俺も!あ、俺、上谷大地(かみやだいち)。あんたは?」  二言三言話しただけで、苦手なタイプだと思った。そもそもボーダーのロングTシャツの胸元にサングラスをかけている奴と、まともに話せるわけがない。 「刈澤弥生(かりさわやよい)。」 「やよい?三月生まれ?」 「いや、四月。」  変なの、と大地は大きな目を細めた。変ではない。旧暦の弥生に生まれた。そう言ったが腑に落ちなかったらしく、ふぅん、と首を傾げられた。
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