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関係を持ったのはごく最近だ。大学に入学して三か月くらいは一緒にいる時間が長かったが、徐々に大地は別の友人とつるむようになっていった。それでも、大地のほうは俺を最初の友人と認識しているらしく、たまに街へ遊びにいかないかと言ってきた。俺はできればそっとしておいてほしいと願っていたが、あまりに何度も誘われるので、根負けして三回に一回くらいは誘いに乗った。
二年生になってすぐ、大地と居酒屋で飲んだ。俺は酒に耐性があるほうではない。気付くと大地の自宅にいた。以来、折に触れて交際を申し込まれるようになった。無論俺は断った。思い出したときに会って、寝るぐらいでいい。
「弥生ちゃん今日何限まであるの?」
三角債を説明する准教授の声を聞き流しながら、溜まったLINEメッセージの消化を試みていると、大地が話しかけてきた。授業が始まって五十分、周りの学生たちは寝るかスマートフォンを触るかしているので静まり返っている。こういう状況だとさすがに大地も小声だ。
「……これで終わり。」
「マジ?じゃあ行こうよ。」
迷ったが、特に予定もないので俺は頷いた。すると大地がよっしゃ、と小さくガッツポーズをする。黒板を見ると殴り書きの単語がいくつか並んでいた。話を聞いていなかったから、もう理解することは叶わない。
ちら、と隣に視線を移すと、すでに大地は机に突っ伏していた。俺はため息をついて、LINEメッセージの返信に勤しんだ。
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