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 二号館を出ると、厚い雲が薄橙の空をほとんど覆い尽くしていた。梅雨は明けたはずだが、夕立が降ってきそうだ。 「うわ、急ごう。いつものところでいい?」  隣を歩く大地が、大げさに頭の上に右手をかざす。歩調を速めながら食堂の前を通過すると、左腕に水滴を感じた。続いて右手、頭のてっぺん。あっという間に、場を雨が支配した。俺たちはほとんど走りながら正門を出て左に曲がる。歩道橋を渡り切ったあと、再び走ろうとする俺を大地が制止した。 「おい、そのまま行く気か?傘買っていこうぜ。」 「どうせ風呂に入るからいいだろ。」  ごく当たり前のことを言ったつもりだったが、大地は甲高い声でおどけた。 「まあ!大胆だこと!」  苛立ちを感じて、俺は地面をつま先で蹴った。 「その声やめろ。」 「まあまあ。でも帰るときも雨降ってたら困るよ。買っていこう。」  一本だけ買って相合傘する?と素晴らしい思いつきかの如く大地が提案してきたので、一蹴してそれぞれコンビニで傘を買った。大学の最寄り駅までを無言で歩く。雨がどんどん強まって、風も吹いてきた。どの程度を嵐と呼ぶのだろう。少なくとも嵐一歩手前とは言えそうだった。  
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